進化の過程で、顔が小さくなっていくので、脳の容積は減らないので、頭が球形に近付いていく。この傾向は、現在も進行し、短頭化(Brachycephalizzation)が続き、頭の幅が大きくなり、丸身を帯びてきている。短頭化現象は、日本のみならず、各国で、頭示数が大きくなり、短頭化が現在も進行中である。 頭の形は、長さに対する幅の百分率で示される。頭形は気候の影響が大で、寒冷地の人は、大柄で、体積に対する体表面積の比率が小さく、体熱の放散を防ぐベルグマンの法則がある。
頭示数
頭型は人種の区別に用いられる。頭型は頭示数で、顔型は顔示数で示される。頭示数=(頭幅÷頭長)×100で示され、長頭:75.9以下、中頭:76-80、短頭:81以上に分類される。顔示数で、長顔、中顔、短顔に分類され、日本人は、83.8で短頭に入る。
熱帯
熱帯の人は平均、77.3で、熱帯の人は、表面積の大きな頭、小さくて前後に長い頭を持つ。熱帯地方の人は、小柄で、体に対する対表面積の比率を高くして放熱が多い体型にする。
寒冷
寒冷の人は、81.6で、寒冷地の人は、体熱の放散を防ぐ為、頭は大きく丸くなっている。
目
目は、はじめは、体表面の普通の触覚が敏感になり、それが長く伸びた体毛の動きを感じるようになった触覚のようなものや、体の一部が飛び出した触手のような簡単な物が進化し、そのうちに皮膚の一部の光に対する感受性が強くなって原始的な目が進化してきた。目は、脳細胞が飛び出してきて網膜を形成し、傍受した刺激を直接、脳に伝達される。目には、他の感覚器官と異なり、情報が多いので末梢神経に送っていては、情報処理が追いつかないので、脳が出てきて、直接刺激を傍受するように進化し、感覚器官が傍受した刺激は末梢神経を通じて脳に伝達される。 樹上にのぼった先祖は、樹上を移動する時、2つの目の視差を利用して立体視が必要になり、物を手に取るようになった霊長類は、近くの物が見えるように、左右の目が寄ってくるという変化が生じた。顔を認識し、個体を識別する必要が生じている。群れの中で、順位を理解し、上位に服従することによって、群れの一因になっていることが可能になる。
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皮膚の一部の光に対する感受性が強くなって原始的な目が進化してきた |
樹に上った霊長類の目は立体視を可能にするため左右の目の間隔は狭まるように進化した。 |
表情を理解する脳領域
右脳に顔を認識する顔領域があり、表情や身振りを理解する。左脳の正反対側は言葉を司るウェルニッケ、ブローカ野が存在する。対象位置にあることから身振りは表情を理解する能力が言葉を使ったり、言葉を理解する能力に進化した。人は、笑顔を受けると笑顔が作られるように、他人の表情を見ると同じ表情になる。相手が表情すると、自分がそうなるようになる。この表情の模倣が、社会性の基礎になり、社会的な信号のやり取りに関係している。表情を見て、同じ表情を返し、共感を形成するように、表情が進化の過程で発達した。人は互いの表情をまねることによって、コミュニケーションに使って仲間意識、社会的結束と強めることによって、生存に有利になる。人を好きになるということは、交尾に移行させる為に進化した感情であるので、関心のある異性の顔を見ている時、男女で脳内で活動している箇所が異なる。男性は視覚に関係する島皮質が活動している。男性は若くて、かわいい女性を好む。そうした女性が子供を多く産んで遺伝子を残したからである。女性は、男性の顔を見ている時、記憶に関係する箇所の帯状回が働かせている。相手が良い父親になってくれるか、子育てにふさわしい相手を選んでいる。この子育てこそが、人間が恋愛システムを進化させた。人は7百万年前のアフリカで、直立し、2本の脚で、体重を受けとめるために骨盤の形態が大きく変化し、産道を大きくできないという制約を受けた。道具を使って狩をし、肉を食べるようになって脳が肥大化した。その為、赤ちゃんを未熟児で産むしかなかったので、女性はつきっきりで、赤ちゃんの世話をする必要があったので、記憶を頼りに、食糧を運んでくれそうな男性を見極めるように進化した。しかし、恋する脳内で活動が抑制されている箇所がある。恋をしている時に好きな人の顔を見ると、機能低下する箇所は、扁桃体、頭頂側頭結合部の否定、批判を行う箇所で、恋すると恋人を批判的に考えることができなくなる。好きな人の顔を見た時、腹側被蓋野が活動し、扁桃体、頭頂側頭結合部が機能低下するという2つのシステムによって成り立っている。
横幅
大人の目の横幅が平均2.5cm、両方で5cm、日本人女性の片目の横の大きさは2.4cmである。眼球の周囲についている眼筋や眼窩内の脂肪組織を加えると、眼窩の幅は最低、3cmになる。鼻腔の幅、約1cmを加えると合計7cmになる。鼻腔、側頭筋が必要であるので、顔の幅は少なくとも9cmは必要である。 縦幅
縦幅が8mm程度、縦横比は大人で1/3で、子供は大きくなり、縦幅の比率が少し大きくなる。中川によると、目の縦横比は大人で縦が横の1/3で、子供の目の横幅は大人より大きいので可愛い。目を最大に開いたとしても平均15mm程度であり、2/3にはならない。中川喬他(1974),日本人の眼瞼の形態および上眼瞼挙筋機能,臨眼,vol.28,pp.689-692.
子供
子供は、目自体は大きいが眼裂が大きくないので、白目が見えず、黒眼(虹彩)部分が占めている。顔は3等分されるが、子供の目は、顔の中央に位置する。大人でも目を下げると若く見える。
大きい目
大きな目は赤ちゃんの幼態保持の表れであり、母性本能をくすぐる。シュモクバエは、目が異常に長いことから出目(シュモク)と命名され、オスの目が長いと雌にもてる。目が長いほど、喧嘩に強く、長生きであるらしい。ヒトの雄は、大きい目が幼形として刺激させる。極端に大きい目は、魅力の解発因、超正常刺激になる。
離れた目
目の幅は、鼻の幅より広い。極端に離れた目は幼形になり、大きい目と同様、魅力の解発因、超正常刺激になる。
日本人
眼球は血管が発達していないために寒さに弱いので、弥生人は、皮下脂肪を発達させて瞼を厚く、眼裂を小さく、細くすることによって寒冷、雪原の反射から保護した。眼輪筋の両側神経支配で、ウィンクが下手である。縄文人のアイヌ人は眼輪筋の片側支配が完璧で、ウィンクがうまく、片眉あげもできる。
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目の幅は、鼻の幅より広い |
極端に離れた目は幼形になり、大きい目と同様、魅力の解発因、超正常刺激になる母親の養育を誘発する |
瞳孔
ヘスは、女性の写真の瞳孔だけを大きく、小さく修正した写真を男性に見せ、瞳孔を大きく女性を男性は、優しい、かわいい、女性的と、小さくした女性をきつい、利己的、冷たいと評価した。ヘスは、男性にとって向いあっている女性の瞳孔が大きいということは、自分に興味のあることになり、瞳孔の大きい女性に魅力を感じるのだとした。雄が好意的な雌に魅力を感じる方が、求愛のコスト、成功率の点で適応的である。哺乳類には、動物の目を認識する回路があるので、それを流用して、目が強調される女性に魅力を感じるように進化している。Hess,E.H.(1975),The role of pupil size in communication.,Scientific American,vol.233,pp.110-119,Nov.
視線
ヒト以外の動物は、視線の方向を隠して、捕食しようという意図を隠し群れの中で、上位にガンをつけるようなことがないように視線をわからないようにしている。人の眼裂は、眼球と同じくらいの大きさに広がり、白目の部分の着色を喪失し、白目が目立ち、視線の方向がわかるように進化した。
Collar
ヨーロッパ人の虹彩は、青く見える。ややメラニン色素顆粒が多いと、青と淡褐色が混合して緑になる。それ以外の色も、メラニン色素顆粒の量と大きさと分布によって説明できる。メラニン色素が少ないヨーロッパ人の目は強い光に弱いので、サングラスを必要とする。アジア人や黒人の目は、茶色であるが、ヨーロッパ人でも日差しの強い地域に住んでいる人も茶色である。
口
口は、5億年以上前、海中を一定方向に動いている動物の前端に孔があき、栄養物を体内に取り込むようになって形成された。原始的な動物は、口がついている方向に移動するように進化した。顔は口ができることから始まったのであり、摂食器官として顔が形成された。確実に捕食できるように、あるいは、捕食者を察知できるように、口の周辺に目、鼻、耳が配置されその上に感覚器官、味覚、嗅覚、触覚、聴覚が集合した。
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顔は口ができることから始まったのであり、摂食器官として顔が形成された。 |
Function
顔は印象形成に大きな影響を与えるが、顔の印象形成に最も、大きな影響をするのは口元であることが示されている。ラムズィ(1983)の研究は、他人の感情は、顔面のコミュニケーションに関わる個所である口と目が最も決定し、好感、嫌悪感を誘発したりすることを報告した。テリーは、顔全体に対する評定と、顔と各部の評定の相関を分析した結果、顔全体の魅力度と最も相関が高かった順位は、1.口、2.眼、3.髪、4.鼻の順序で、魅力度と最も相関が高いのは、口であることを明らかにした。マッカフィーは、顔の評価において、口が眼よりも影響することを明らかにした。通常、口幅の方が眼幅よりも大きい。横顔の美しさに関係が強いのは、口元である。ブルックスとホッフバーグは横顔の可愛いらしさに関し、口元が非常に重要であることを明らかにした。Brooks,V.&Hochberg,J.(1960),A psychophysical study of “cuteness”.,Percept.Mot.Skills,vol.11,p.205.
Size
口の大きさは、白人、黒人の女性は平均5cmで、両目と同じになるが日本人などのアジア人の女性は、4.5cmで全人種中、最も小さく、約1割小さい。アジア人男性は、口の小さい女性を、欧米人男性は、口の大きい女性を魅力的に感じるように人種差がある。ブラッドショーの実験は、口が大きい人ほど間抜けに見え、口が小さい人が賢いと印象を受けることになることを示した。Bradshaw,J.L.(1969),The information conveyed by varying the dimensions of futures in human outline faces.,Percep.Psychoph.,vol,6,pp.5-9.
唇
哺乳類は、おっぱいを吸うので、唇がある。チンパンジーの乳首は長く突き出ているので、赤ちゃんは、容易に乳首に吸いつくことができる。ヒトの場合は、お椀型のおっぱいが進化し、赤唇で密着し、頬で口腔を密閉し、舌で内部を陰圧にして、おっぱいと吸引するように進化した。ディスモンド モリスによると、人類が直立した時に、雌の性器が隠れてしまい、これを補い、陰唇部のコピーしてヒトの唇が進化したのだという。唇が厚いということは、子供の特徴で、女はネオテニーによって厚い唇をもつようになった。唇は女性ホルモンのエストロゲンの作用によって厚く、魅力的になる。赤唇は、口の縁が太く発達し、口の内部の皮膚がめくれあがって出てきたもので、チンパンジーと分岐後に進化した。ヒトの雄が豊かな唇や乳房、腰のくびれに性的に刺激されるのは適応的である。妊娠して子供を作るには、カロリーが必要であり、ヒトのメスは皮下脂肪がある程度以下になると妊娠しなくなるので、ヒトの雄は、体の曲線美をもつ雌に対して、魅力を感じるように進化している。ディスモンド モリスによると、哺乳類は背骨と足の向きが直角であるので、雌の性器を直視することができたが、直立すると背骨の向きと後足の向きが一直線になったため女性器を直視できなくなった。それを補償するために、女性器のコピーとして、唇が進化したのだという。
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ヒトはおっぱいを吸うために赤唇が進化した。 |
キス
キスは赤唇が存在しないチンパンジーなどの霊長類にも社会的な融和を促進するディスプレイとして存在する。このことは、唇が女性器のコピーとして進化する以前から、社会的なディスプレイとして存在していたことを示している。アイブル アイベスフェルトによると、キスは、親が子供に給餌行動に由来し、さらに、キスしやすいように進化したと説明している。Eibl-Eibesfeldt,I.(1970),日高敏隆,久保和彦訳(1974),愛と憎しみ,みすず書房.
唇を合わせただけで、インフルエンザ、腺ペストなど、278種類の細菌、ウィルスが行きかうことになるが、ピーター ゴードン(英、歯科医)によると、食後の口腔内は、糖溶液、酸性の唾液になり、歯垢の原因になる。キスは自然が作った洗浄プロセスで、キスの刺激で唾液が流れやすくなり、歯垢レベルを正常に戻す。キスをすると虫歯、歯周病に罹患率が減り、ストレスが減少し、カロリーが消費され、誰もが、異性を求め、愛情に飢えているので、キスによって自尊心が高まるとしている。
鼻
太鼓の魚類の鼻の孔は、左右に2対で4個存在していた。前の穴から入った水が後ろの穴から抜ける間に臭いをかいで、捕食物、捕食者を察知していた。上陸した脊椎動物が呼吸器を鰓から肺に変えたとき、鼻腔が口腔に開いて以来、空気を吸うための器官として機能するようになった。前方の穴は、鼻の孔になったが、後ろの穴は、目頭に移動し、涙点になり、ここから涙を鼻腔に流す道である鼻涙管ができた。くしゃみは、鼻の中の異物や鼻汁を対外に排泄しようとする防御反射である。軟口蓋は、鼻腔と口腔を仕切っている口蓋で、口蓋垂が垂れ下がっているのであるが、軟口蓋を上にあげて、鼻にいくほうの道を塞いで、息を口から吐き出してくしゃみする。 霊長類の顔が退化すれば、顎の突出を失い、下顔面の横幅も狭くなり、頭蓋骨の内部だけでは鼻腔の容積がとれなくなり、顔の外部に突出して鼻腔の容積を稼ぐように鼻をはみ出させて確保するようになり、鼻とオトガイ隆起が高いままに残った。テングザルの鼻は、雌が雄を性淘汰した形質である。
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上陸した脊椎動物の鼻は呼吸器になった |
鼻のサイズ
新古典派やルネッサンス期の基準では、鼻の幅は、両目の間の距離に等しく、顔の幅の1/4、唇の幅の2/3であり、鼻の高さと傾きは耳に一致し、鼻の長さが耳の長さとだいたい一致する。鼻は、正面から見たときに小さいことは、女性にプラスに働き、男性には、マイナスに働く。横から見た場合、低いと横顔の美が損なわれてしまうことが示されている。
鼻は空気を換気するが、吸気は、気管、気管支を通って肺胞に到達し、ここでガス交換を行う。鼻の役割は、呼吸であり、吸気を肺に域までには加温、加湿することであり、それが、鼻の外部形態や鼻腔の大きさを決定し、臭覚は重要性が低い。 外気が直接、肺胞に接したら、障害を誘発してしまうので、鼻腔は吸気を加温加湿し、肺を直撃することを防止し、鼻毛、鼻粘膜によって、外気のゴミをとらえ、鼻粘膜の殺菌作用によって、吸気を浄化する。 外気と直接肺に入れるとガス交換がうまくいかず、肺を痛めるので、 鼻根部が大きくなり内部の鼻腔が広がるほど、冷たかったり乾燥していたりする外気が鼻腔を通った時に流速が遅くなり、暖めたり湿度を高めたりする。 口呼吸の吸気は肺尖まで届かず、持続的な酸素不足を齎し、学習能力に影響する。先祖は、湿度、温度が高い熱帯の森林の樹上に生息し、鼻への負担が少なかった。乾燥したサバンナに降りてきて漸次高経度地帯に移動し、冷涼な地域に侵入した為、吸気の環境は悪化し、鼻口腔機能は向上しなければならない事態が生じ、口呼吸が始まった。 鼻腔が小さければ、呼吸器疾患に罹患する確率も高まる。加温は、鼻粘膜下に縦横に走る血管によって、加湿は、鼻粘膜下に滲出する組織液を吸収し、湿度は90%を帯びる。鼻腔上部には、嗅部があり、匂いを嗅ぐ。
脳冷却機能
鼻によって、外気が体内で温められることは、鼻を通過する血液が冷却されることになり、哺乳類は、脳が過熱したとき、脳を冷却する機能に利用している。頭蓋骨内の目の後方にある海面性静脈洞は、脳の温度が高くなったときに鼻からの血液を海面静脈に流入させ、海面性静脈洞を通り脳の各部に血液を送る動脈流の温度を下げる機能がある。鼻毛が空気中の塵を除去する。
コーカソイド
酷寒で、乾燥地帯は、鼻腔の負担は増大し小顎化が進行しても、鼻腔は拡大する必要が生じ、咀嚼器官が縮小した為に、外鼻が残ってしまった。 そのため、ヨーロッパや中東の寒冷地のコーカソイドの人には、細くて長い鼻が発達した。湿度の高い、アフリカやアジアの人は、鼻は短くて広がった鼻に発達した。 白人は、上顎骨が縮小し、白人の鼻が高くみえるだけなのである。
ニグロイド
ニグロイドの鼻が低いのは、生活環境の温度が高く、熱帯雨林のような湿潤な環境にいたため、鼻の熱交換、加温の必要性が少ないからである。 北ヨーロッパや中東の空気が乾燥し、冷たい地域の人の鼻は、肺に行くまでに加温、加湿される必要があるので、細くて長い鼻が発達した。 湿度の高い、アフリカやアジアの人は、鼻は短くて広がった鼻に発達した。 黒人の鼻は低くみえるが、鼻梁傾斜度は変わらない。
モンゴロイド
日本人の祖先、寒冷適応した渡来系弥生人の鼻の鼻はアレンの法則によって、小さくなっている。アレンの法則とは、寒冷気候下の動物は、球形にして、突出部分を減らす。 トムソン-バクストン法則とは、高温多湿地域の人種ほど、鼻が平たく低くなることである。コーカソイドと二グロロイドの鼻がある。
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高温多湿地域の人種ほど、鼻が平たく低くなる |
寒冷地の人には、細くて長い鼻が発達する |
コピー説
フロイトは、人の鼻が男性器のコピーであるとする解釈した。モリスも、ヒヒの一種であるマンドリルの鼻は、青い陰嚢と赤いペニスの形態をしている雄の性器を擬態にして進化し、人も鼻も同様だと主張した。鼻の男性器コピー説は、鼻の進化において環境適応より社会的な相互作用が重要であったことを主張する説である。ガスリーも、霊長類で鼻が強調されていることや、大人の鼻が子供に比較して発達していることを挙げ、この説を弁護した。
鼻と美人の関係
カニングハムは、鼻の大きさと女性の魅力は負の相関があることを示しているが、ヒトの顔の正面図において、鼻は口や目に比較して重要でないことを示した研究が多い。それは、目の認知機能の起源が古いのに対し、突出した鼻はヒトが類人猿から分岐してから顕著になった形質であるので、ヒトの顔の生得的な認知回路において、顔から出っ張った鼻のことを計算に入れるように進化する時間が十分でないことによる。テングザルの雄の鼻は、雌が性淘汰した形質である。
E-Line
横顔において、鼻と顎の先端を結んだ線をE-ラインという。類人猿、原人、旧人、新人(現生人類)となるにつれて、口もとが後退してくる。つまり、現生人類となるにつれて、口もとがE-ラインからでなくなるということである。食生活の環境適応、性淘汰によって、顎の退化によって、口もとが後退すると同時に頤の形成が進化し、口唇がEラインから後退するようになった。子供の場合、顔は丸く鼻が低く、頤も発達していないので、口もとがEラインよりも突出する。モンゴロイドはコーカソイドよりも幼形であり、女性は男性よりも幼形であるので、日本人は欧米人より、女性は男性よりもE-ラインの外側に唇が突出しやすい傾向にある。 フォスターは、唇がEラインより内側にあるのが美しいとした。
Foster,E.J.(1973),Profile preferences among diversified groups.
Angle Orthod.,vol.43,pp34-40.
橋本は、下唇の位置がEラインより内側2.6mmにあるのが好まれるとした。橋本康助他(1977),E-lineを基準とする好まれる側貌に関する研究(第1報),歯学,vol.64,pp.988-995.Ricketts,
瀬端は、Eラインは口もとの出っ張りを計測する基準にすぎないが、口もとが頤や鼻に比べて、出っ張っていないのがよいとした。 瀬端正之他(1972),調和のとれた日本人側貌構成基準に関する研究,
白井は、18歳から24歳の日本人女性の調和群の上唇で1.68mm、下唇で0.03mm、Eラインから後退しており、不調和群はEラインから突出していた。日本人女性の標準群では上唇は平均0.15mm,下唇は平均2.18mm、Eラインより前方に出ていた。白井敏雄(1974),口腔周囲における硬軟両組織側貌形態の比較検討について,歯学,vol.62,pp.625-648. 穴倉によると、正常咬合者の男性の上唇はEラインの内側1.0mmにあり、下唇は0.5mm、Eラインよりも外に出ている。女性に選ばれた男性の口もとは、上唇はEラインの内側2.8mm、下唇は内側0.6mmであった。穴倉浩介(1969),頭部X線規格写真による硬組織と軟組織とについての計測的研究,日矯歯誌,vol.28,pp.263-273.
かわいらしさ
女が男に期待するのが、背の高さである。サマラス博士によると、脊が低い方が長生きしている。 男が女に期待するのが、かわいさ、処女、ウェストヒップ。ヴィクター ジョンストンは、男はかわいいい女性を見る時に限って脳波が揺れることを見つけた。性の決定は、X染色体を2本持っていると女、XとY染色体を1本づつもっている男になる。Y染色体には、睾丸を作る遺伝子があり、睾丸は、男性ホルモンを形成し、男性脳を形成する。美女の基準は、顎が細いこと、目が大きいこと、下顔面が短いことである。
幼形
鳥類も哺乳類も子供の時は丸い顔つきである。ローレンツによると、親の保護を得るために丸くなったのだという。女性に残っている可愛いと思える幼形は、男性に欲情を起こさせるために残った。美醜感は、可愛いいかどうかに近い。男性の性欲は攻撃欲求に基づく。自分より弱そうと思える相手に攻撃欲求が生まれる。男性の性欲は、自分より強そうな女性に性欲は生まれない。か弱く、可愛いと思える女性と男は刺激され、性欲が生まれるように進化した。適応度を上げるために、なるべく環境に適した形質をもつ配偶者を選ぶように淘汰圧が加わり、可愛い、幼形を選ぶようになった。
ジャネット マン(心理学者)によると、生存のために、子供は、幼形が必要だった、肉体的な美に対する反応は反射的なものであり、幼い時から、人の心に根付いていることを赤ちゃんが教えてくれる。子の生命力を感じ取れる母親が自然淘汰されてきた。原始時代の環境では、子が生存できるか、愛情を傾けるべきかどうかを早期に判断する手がかりは、その子の外見だった。貧しい家庭では、生存の可能性の高い方に愛情を傾ける。進化の過程で、母親の繁殖適応能力を高めるべく作り出されてきたメカニズムの働きによるものである。
新人
新人の顔面の特徴を頭部が球形に近くなることにより、おでこが広くなっていること、眼窩上隆起の退化、頬骨の縮小、口もとのでっぱりの退化、顔の骨の出っ張りの部分が少なくなっている。
女性
D.I.ペレットは、男女の顔は、平均化より、女性化した顔が好まれることを明らかにした(ネイチャー,399巻,p741~742,1999年6月24日号)。ヒトは、ネオテニー(幼形成熟)が生じ幼形の傾向をもつ。男女が性淘汰してきた結果、大きな頭、まつげ、丸みを帯びた体型、体毛の少なさ、しわのない肌をもつ。
男性は、女性の可愛い外見を好んでいたため、女性により幼形が残っている。男にかわいさがあると、社会的な順位や地位をめぐって対立場面で不利になる。身体的、精神的に劣っているように判断され、社会的優位に立てないと印象を与える。女性の好みは、男性を強調した超男性顔よりも、男性と女性の中間的な顔を好む傾向がある。
なぜモンゴロイドが幼形を残したか
新モンゴロイドは、北方シベリア方面で進化し、アレンの法則で、体の出っ張りが減少し、丸くなり、体温を保つため体積当たりの体表面積を減少するように淘汰がかかり、幼形成熟が選ばれたプレモンゴロイドの個体群の遺伝子プールがより寒冷化に適した。幼形的な方向に適応度の極があるのだから、幼形的な形質を配偶相手に選ぶことにつながる心理形質、可愛らしさを重視する心理傾向、ないし、脳内の生得的な美の原型が、幼形的な方向にずれているといった形質が選択されて、個体群内に固定した。このような容貌選好が個体群内に固定されると、性淘汰を通じて寒冷化適応とは一致しない形質にまで影響を与える。
なぜ、かわいくなったのか
哺乳類は、少数で、確実そだてる戦略をとるように進化した。赤ちゃんがかわいいのは、親に子育てする為の自然の法則である。赤ちゃんは、胎児の間に脳が発達し、目から上の部分が大きくかわいい。赤ちゃんのかわいい顔は、子育ての仕組みから生まれた種の保存に必要なのである。授乳している為には、かわいいという顔のシグナルが必要である。鳥は、子供がつつくとか、泣き声とか、色とかが引き金になって養育が解発されるように進化した。哺乳類の子育ては、手間がかかるので、親に関心を引く顔である必要があった。 あかちゃんの顔のつくり
赤ちゃんの目が下にあるのでかわいく見える。目が下にいくほど、幼く見える。赤ちゃんは、顔に対し、目が大きく。目の黒い部分が大きく占め、白目が少ない。哺乳類は代謝が早いので、消化を良くする必要があるので、咀嚼する。その為にも唇がある。ヒトは、口の中の粘膜が捲り返った赤唇がある。ヒトのおっぱいは、皮下脂肪が多く、出っ張っているので、乳首がとびでていないので、赤唇が必要になるのである。
超正常刺激
動物の容姿選択で、標準的な形質が好まれるのであるが、いくつかの形質について標準よりも極端なものが好まれる現象がある。 動物が選択や嫌悪において、燕の極端に長い尻尾、孔雀の大きい羽根のように、現実にはありえないほどの極端な刺激を超正常刺激とよばれている。人のばあいも、中庸的な形質が好まれるが、幼形とか、大きい目とか、体や顔が幼形なのに胸が大きいとか、極短な形質が好まれ、超正常刺激として、男性を興奮させる。魅力がないと雌に選択されないので適応度を低めることになる。ツバメの雄は、尻尾が長いほど雌に好かれる。非現実的でありながら魅力的な形質は種内に固定され続けることになる。モーラーの研究によると、長すぎる尻尾をもつことは、非現実的の増大が大きくなりすぎ、環境は非適応的になるので、結局、尾の長さからもたらされる性的な成功と、長い尾の非実用的性からくる環境への不適応が均衡する長さに落ち着くことを示した。
Molar,A.P.(1989),Viability costs of male tail ornaments in a swallow.,Nature,London,vol.339,pp.132-135.
ダグラス ジョーンズの研究によるとモデルの顔の特徴は、幼形で、紺ヒューたーでの推定年齢は、6,7歳であった。ダグラス ジョーンズはこれを「超常刺激」と呼び、モデルは、自然界における通常の比率を超えて誇張されているという。リチャード ドーキンス(生物学者)は、トゲウオに独自の超常刺激を「セックス爆弾」と呼んだ。トゲウオの模型を作り、腹の部分を膨らませると雄は交尾をしようとする。トゲウオの模型の腹を梨型にし、現実より誇張するほど雄の欲望を誘う。幼形の顔、体で、胸やお尻を誇張したAVもセックス爆弾を作ることを意味する。男性は、女性の幼態保持;ネオテニー的な幼げな特徴、無力で頼りないものに強く反応する。男性にとって、女性の幼形、幼形にも関わらず発達した乳房は超正常刺激になる。
平均化
ダーウィンのいとこであるサー フランシス ゴールドンは、犯罪者の顔を平均化して、合成した顔を作って、犯罪防止しようとしたら、美しい顔ができ、美の基本は平均化にあることに気づいた。 顔を平均化して合成すると美しく、かわいく、バランスのとれた魅力的な顔になる。左右のバランスがとれ健康的に見える。 チンパンジーと人間のDNAの違いは2%、ヒト間は、0.02%である。その違いが、個性ということになる。個体によって変動する非対称性をフラクチュエイティング アシンメトリーといわれる。ランディ ソーンヒルは、1.人間の美しさは、顔や体の対象性の程度によって決定される。2.人間の顔や体の対象性は、病気への強さに相関しているという考えを示した。彼は、1,2の条件を満たしていても、不細工は存在するとした。美の基準は対象性だけでなく、平均化された顔も指摘した。平均化された形質は、環境に適応しているとした。カール グラマー(独、社会生物学者)も、平均的で対称的な顔が最も美しいという考えを支持した。
Symmetry
美の基準は、レオナルド ダビンチも対象性にあると考えた。対象性とは、線や平面や中央軸を境にした左右の形が同一であることである。 アリストテレスは、肉体美に世界的な規準があると主張した。右左対称を含めたバランスの取れたプロポーションがある。2歳児ですら、左右対称の顔の写真を長く見つめる。 ダーウィンのいとこのサー フランシスコ ダーウィン犯罪者の平均合成写真を作ったら、平均化され、美に近づくことが判った。統計では、対象性の顔をした男性は、性体験が4年早く、数3倍である。ツバメの場合、ある人の実験によると、雄ツバメは繁殖地に到着して約10日で交尾できるが、長い尻尾を持つものは、2日半で、尻尾を短く切られると12日、左右非対称性にされた場合は20日かかった。ダニを放逐された巣の雄ツバメの尾羽の非対称性が著しくなるが、雌はダニが居ようが居まいが尾羽の長さに影響しない。 Evolution
ラルフ ハロウェイは、1972年、トゥルカナ湖で発見された200万年前のホモハビリスの頭蓋にブリーカ領があり、左右の脳の大きさが非対称性に異なって、チンパンジーより高度な言語を使用していたことを示した。ハロウェイは、言語は、アウストラロピテクスの出現と同時に始まったとしているが、リチャード リーキーは、ホモハビリスが言葉をもたらしたと主張した。ニコラス トスは、オルドワン石器伝統の担い手は右利きであり、左脳が少し大きいことを示した。左右の脳の機能分化から言語能力は、すでに発生していたことを示した。 J.T.マニング(リバプール大学)は、オスの孔雀の玉模様の数が多いほど、配置も対称性であることを発見した。犬歯の対称性が喪失しているのは、チェルノブイリ同様、環境破壊、汚染が原因である。博物館に保存されているゴリラの標本では1850-1980にかけて100年以上の間に左右の犬歯の対称性がなくなっている。特に20世紀初頭からの変化が激しくなっていることを発見した。 Development
胎児が母体内にいるとき、母親が病気に罹患すると、顔の発生、発達に影響が出て、顔に非対称性が出現し、醜さの原因になることが知られている。Fluctuating Asymmetryとは、カニのはさみのように、すべての個体に一貫して左右差があるのではなく、個体によってバラバラであることをいう。これは、必ずしも寄生生物による影響ではなく、遺伝子の欠損、有害物質の影響で生じることもある。ランディ ソーンヒルによるとは、この原理は、人間にも当てはまり、顔が良いほど、体の対称性が高く、健康、運動能力、精子の機能にも相関していることを発表した。 女性の体型については、男のこのみは文化によって決定されている。でぶが魅力的な分化のある。 均等の取れた相手にひきつけられるのは、遺伝学的に頑丈な交配相手を選ぶために進化してきた動物的なメカニズム。
平衡理論
衡平理論は、社会的交換関係における成果の分配を扱う理論であり、この理論によると、人は、不均衡を感じると2つの基本的形態をとる。1.衡平を回復しようと1.補償を図る、あるいは、2.正当化する。人は、報酬、損失を経験する。交換における報酬から損失を引いた最終的な結果は、交換の成果とされる。不均衡な交換に対し、その両者は、公平に反応することで、不均衡状態を改善しようとする。人がルックスの類似した異性とカップルになるという事実は、交換市場、平衡モデルが適合する。外見の魅力が類似している異性を配偶者として選択する。 人は、美男美女を望むする傾向が顕著がある。お見合いなどで、相手が美男美女の場合は、本人が醜形であっても、自分に相応しいと思い、相手が醜形の場合は、好意を感じず自分にふさわしくないと考える。 しかし、人は、自分と同レベルの異性を恋人に選ぶというマッチング仮説というのがある。それは、魅力ある相手には、断られるという拒否の恐れと、醜形ではプライドが許さないという双方の心理が働く為に生じる。人は、相手がどのくらい類似しているか類似性の要因を重視している。 カップルの顔が不釣り合いな場合、外見が魅力的でない方には、収入が多く、高い職業的地位にあるとか、非身体的属性があるはずであると考えられ、男性が美しい女性と関係があるとすると、その男性は、印象が向上し、好意的にみられる。しかし、男性が、外見が魅力的でない女性と関係があるとすると、好意的に見られなくなる。魅力的な女性は、魅力的でない男性と関係があるとすると肯定的に評価される傾向がある。
老化
性成熟し、顔が大人の顔になるのが10代の後半である。親を刺激する顔から異性を刺激する顔に変化するのである。成熟し、老化していく。大人になった瞬間に老化が開始される。 筋肉や靭帯の付着部位や刺激を受けるところの骨が増殖し、えらが張ったり、腰が大きくなったりする。 皮膚の中の弾性繊維が劣化し、皺、たるみが形成される。骨に凹凸ができる。眉が離れてくる。新しい毛ができないので、そのままの毛が伸び、耳の毛、鼻毛が長くなってくる。 唾液の分泌が少なくなり、唾液の殺菌作用が弱まり、歯周病が振興し、口臭もきつくなる。 マセスによると男性が女性の魅力を評価する場合、女性の年齢が10代以降、年齢とともに低下する。女性が女性を評価する場合も、男性ほどではないが、年齢とともに評価が下がるが、男性の魅力は、加齢の影響を受けにくいことを示した。より繁殖力の高い女性を配偶者として選択することは、子を作るという点では適応的であるからそのような女性を選択する形質は進化するし、女性もそのように見せるように進化する。
Mathes,E.W.,et al.(1985),Ratings of psychological attractiveness as a function of age.,J.soc.,J.Soc.psycholo.,vol.125,pp.157-168.
顔が良いと
均整の取れた男は、繁殖力も高く、セックスの初体験が4年早く、浮気の回数も多い。プロポーションの良い男性とのセックスは、オーガズムに達しやすくそれによる収縮で精子をより吸収する。 魅力的な人は、肯定的相互作用の経験が多い為、自信ある行動パターンを形成する。男性は、魅力的な女性のとなりに座りたがるが、魅力的で、自己評価も高い男性が隣に座る傾向があり、男性は、魅力的になるほどデートを受諾する可能性は中程度や低い魅力をもつ女性より有意に低く見積もる。自分が魅力的だと自己評価が高い男性は、女性をデートに頻繁に誘うが、自己評価の低い男性は、デートの受諾の可能性を低く見積もり誘わない。魅力的な男性は、異性関係が華やかなになり、他の同性をブサイクと思う。容姿が魅力的な男性は異性関係が激しいが、魅力的な女性には、そのような有意は存在しない。 ルックスによって、行動特性が決定されるので、悪いなりの性格、行動が決定される。矯正治療などによって、内面的な変化が生じ、うまくコミュニケーションができるようになれば、不安は減少し、自信を持てるようになることがある。知性には、対人知性と論理的知性があるが、対人技能訓練は、対人知性を発達させる。対人技能訓練には、教示、模倣、行動の反復練習、強化、割り当てが含まれる。対人技能が高まれば、自分を客観視し、適応的な社会的発達が促され、ルックスに関係なく、他者から好意的な印象、行動を誘発する。対人技能訓練には、行動のロールプレイ(役割演技)、モデリングおよび、コーチ(直接のフィードバックや指導)がある。 子供の幼児期の体験は、子供の自己認識の形成に寄与し、子供の外見の魅力と反応の背後にある内的過程が、その人の性格を発達させる。外見の魅力が他人に異なった期待を喚起し、他人から異なった社会的交換を誘発し、この社会的交換から発達的変化が生まれる。外見に良し悪しは、異なった反応を受け取り、異なった対人イメージ、自己への期待、対人上の人格スタイルを自己の内部に定着させる。他人から魅力的と思われた人は、そのように行動が変化して、魅力的に振る舞い、自己成就予告が起こる。社会環境からのフィードバックによって、魅力的な男性は、対人技能能力は高くなり、その社会的波及効果は、社会的行動に強く影響する。 美しい人は、人付き合いがうまく、自信があり、否定的な意見にもめげない。自分の容姿というのは、社会生活に影響する。自己評価の確かさについて主観的な確信が社会的リアリティと呼ばれ、社会的リアリティが高まる程、自己評価が安定し、日常生活での適応度が高まる。容姿が優れている、あるいは劣っていると思っている人は、社会に対して適応度が低い。自分の容姿が他人と比較して平均的だとみなしている人は、周囲に比較する人がいるので、自己評価が安定し、適応度も高くなる。
自分の性格
ルックスが良い人は、ちやほやされるが為、高い自尊心を発達させ、この自尊心の形成が、野心や成功を志向する人格特性の発達させる。逆にルックスが歯並びが悪い人は、無視され、社会から退却を余儀なくされ、非社交的で、自己防衛的に人格特性を形成する。ルックスを損なうことが、その人の自尊心を低下させ、社会的、経済的チャンスを失わせる。男性の魅力と女性との性的関係には、有意な正の相関が存在するが、女性にはない。男性の外見の魅力と同性との過ごした時間との間に優位な負の相関が存在している。女性には、その関係は存在しない。ルックスの良い男は数多くの女性と性的関係を作り、同性と居る時間が少ない。
他人の行動
人は外見が違えば、知覚され方も違い、扱われ方も違ってくる。ルックスが良い人ほど、好意的に処遇され、魅力的な人が何かしてほしいと認識したら、人はそうするように動機づけられている。外見が魅力的な人を喜ばせ、魅力的な人に受け入れられたいと動因が喚起される。魅力的な人は、生理的ストレスを低下させ、醜形は生理的ストレスを増加させる。しかし、容姿の良い人は、自己中心的、俗物的、功利主義的と判断される。男性はあまり魅力的な女性には、手を出せずに回避する。又、美女は、社会的、性的にも楽しい人生につながるが、自惚れや自己中心性にもつながる。ルックスが魅力的な男性の悪事を読んだ女性は、容姿が魅力的と評価しなくなる。 ラングロアの研究によると、クラスメイトからルックスの良い男子は、向社会的な行動、又、反社会的行動もしそうにも思われ、年齢とともに増加する。魅力的な男児は、有能な行動をするとも、無能な行動をするとも判断される。魅力的な男子は、同性から嫌われ、年齢とともに、増加するが、女子は有意はなかった。魅力的な女児は、魅力がある女児は有能とみなされ、反社会的行動と無縁と判断され、好まれる傾向は年齢とともに増加する。ラングロアによると、8歳までの間にクラスメイトは、魅力的な子供を肯定的に評価するようになり、魅力的でない子供を否定的に評価するようになる。子供は、6歳までに容姿によるステレオタイプを確立していると思われる。 ディオンの仮説によると、魅力的な子だと悪いことをしても、いつも反社会的な行動をする子供だと判断されることは少ない。クラスメイトは、魅力的な子は向社会的行動を行い、有能と判断し、魅力的な容姿の子を好む。容姿は、扱いに影響し、良い人は、良い扱いを受け、悪い人は悪い扱いを受ける。人は魅力的な人の態度、行動を手本にする。反対に、人は、他者がステレオタイプ化された期待どおりに扱うことで、他者を期待された通りの行動を取らせる。魅力は、社会的強化、認知的均衡、古典的条件付けの原因になる。ステレオタイプ化された期待は、外見から異なった分類される人たちに、それぞれ、期待される行動を誘発するような扱い方をしてしまう。 人は、ルックスの魅力的な異性を自分と同じような行動をし、同じ思考、趣味を持ち、同じ態度の持ち主であると思いたがるだけでなく、思いこんでしまう心性がある。女性のルックスの魅力的な男性に対する思いこみの傾向が顕著になる。ルックスが魅力的な人は、自分と態度が類似していると考える因果的判断によって好意的に扱われる。魅力的でない人は、態度が異なっていると知覚される為に、他人から否定的なフィードバックを受けることになる。有権者は、ルックスの魅力的な立候補者の意見を自分と似ていると知覚するので、選挙ではルックスが勝つ重要な要因になる。
他人の評価
テイラーは、小学1年生の人気と容貌に正の相関があり、身なりのだらしなさ、ボス的なふるまいとは負の相関があることを見つけた。
Tyler,L.E.(1951),The relationship of interests to abilities and reputation among first-grade children.,Educ.Psychol.Meas.,vol.11,pp.255-264
ハーロックは、青年期に人気の要因になるのが、身体的魅力であることを挙げた。Hurlock,E.B.(1955),Adolescent Development(2’nd),McGraw-Hill.社会全体での相関現象を学習して、それを個人に当てはめることによってハロー効果が発生する。現実には容姿の良さと道徳性にほとんど関係がないにもかかわらず、未知の要因によって容姿の良さが道徳性の高さにハロー効果を及ぼす。ニクソンは、ケネディに敗れた後、州知事選にも負けて、整形手術を受けて、大統領選に出馬して大統領になった。 ワルスター(米、心理学者)は、デート後に、もう1度会いたいと思わせるような人の特徴は、容姿の良さで、自分の容姿の良し悪しにかかわらず、相手の容姿がよければよいほど、OKという結果が出た。異性の何を重視するかと質問すると、人格、性格、見栄え、知性の順だった。しかし、実際は、見栄え、人格、性格、知性だった。学業成績とデート相手として好ましいかは、関係がなかったことが判った。容姿がよいものは良い容姿の異性を選ぶというマッチング仮説というのがあるが、自己評価が高い人も低い人でも、容姿を重視し、大差がなかった。釣り合う異性を探すのではなく、すこしでも魅力的な異性を求めようとすることが判明した。 自己評価を高められた男性は魅力的な女性に興味を示し、自信を低められた男性は、容姿がそれほど魅力的でない女性に興味を示した。カレン ダイアン(米、心理学者)は、顔写真を見て、印象を推測させた。外見が魅力的なほど人格、性格、地位、能力、幸福度が高く評価された。親としての能力の評価は、普通の容姿の人が最も評価され、次は魅力的でない人、魅力的な人は最低だった。これに対し、ジャクリーヌ婦人が引き合いに出される。マセス(米、心理学者)は、若い男性は年増の女性の魅力を評価しないが、年増の男性はそれなりに評価することを示した。
バイアス
ルックスが良い人は、社会的に良い人格特性、感受性のある、親切のすべてをもちあわせているように思われ、他人に対し、説得力、影響力を持ち、他人から利他的行動を誘発する。その人の好感度は、顔の魅力と人格記述の両方から影響を受けるのであるが、その好感度は、その人が持っていると思いこまれる、ある種の特性によって決定されるのであるが、ルックスは好感度に強く影響を及ぼす。ルックスに魅力は、効果得点(アピール度、印象度、誘目度)に影響するが、認知的評定(信頼性、情報価値、明確性)に対しては効果をもっていないとされている。
雇用
ルックスは、雇用判断に強く影響する。雇用者は、ルックスに魅力があるほど、高い潜在能力を有していると評定し、雇用したいと考え、条件を良くし高い給料を支払いたがり、勤務評定を上昇させる。管理職は、魅力は男性にしか有利に作用しない。人は、魅力的な容姿の人に肯定的な反応を示す。仕事の出来栄えがよければ、外見が魅力的でなくとも差別を受けることがない。仕事の結果が悪い場合、魅力的なら、酷評を避けることができるかもしれないが、魅力的なければ、酷評を受け差別されることになる。外見が魅力的な場合、異性の評価者は肯定的な評価をもたらす。その人の仕事の質と能力の評定に、顔の魅力が有意に影響する。
教師
先入観は、客観的事実が不完全で、あいまいな時に大きくなる。教師は、魅力的なルックスの子供は学級委員になる可能性が高く、家族が少ない家の子で、親が高い収入、高い社会的地位にあると予測することが多くなる。又、ルックスの魅力的な子供ほど、学習習慣、学内態度も良いと評価し、ルックスの魅力的な子供を早く名前を覚える傾向があり、学業面で、好意的な期待を示したり、教師の能力判定は、子供のルックスの先入観、バイアスを受けてしまう。
顔と夫の社会的地位
夫の職業の社会的地位と妻の外見の魅力とは優位な相関がある。 Taylor,P.A.,&Glenn,N.D.(1976),The utility of education and attractiveness for females’status attainment through marriage.,Amer.Social.Rev.,vol.41,pp.484-498.
Buss,D.M.(1989),Sex differences in human mate preferences:Evolutionary hypotheses tested in 37 culture.,Behav.Brain Sci.,vol.12,pp.1-49.
カレン ダイオンは、美貌と性格や、将来の地位や幸福度の予測と有意な相関を、親としての能力は負の相関を、容姿の悪い子は、不正直で逸脱行動を引き起こしやすいと認知されていることを見つけた。
Dion,K.K.Physical attractiveness and
Evaluations of children’s transgressions.,J.Pers.Soc.Psychol.,
vol.29,pp.80-85. |