人類は、2本の足で立ち上がってから700万年、人類は自由に動く腰を手に入れ、長距離を歩くことを可能にした。腰の骨に起きた変化がそれを可能にした。直立し、両手が自由になった人類は、道具を使い文明を作った。1万年前、農耕が始まると暮らしが一変し、腰への負担が増大した。歩くことを忘れ、便利さを追求する中で、膨大なストレスにあふれた社会を作りだした。その過程でヒトのほとんどが腰痛を経験するようになり、二足歩行を選んだ人類の宿命といわれるようになった。腰痛とは腰に痛みをおこす疾患の総称であるように腰に痛みをおこす病の総称であるが、その原因はわかっていないが、歯科医としていかにして治療に参加できるか、考えてみたい。われわれの直立した姿勢は、過去に働いた自然淘汰の結果である。それによる疾患も、自然淘汰のせいで起こる。その姿勢によって起因する腰痛などは、遺伝子の伝達を最大化するように自然淘汰が体を作ってきた挙句の妥協の産物である。
直立二足歩行
1925年、レイモンド ダートは、南アフリカの解剖学教室に赴任し、坑夫が見つけた大後頭孔が下方に位置している頭蓋骨を手にし、これをアウストラロピテクス、愛称をタウングベイビーと名付け、直立歩行していたと主張した。しかし、多くの人に相手にされず、当時の権威、サー アーサー キースに、ほら吹きペテン師と一蹴された。その発見から11年後、大人のアウストラロピテクスの化石を発掘され、サー アーサー キースは、いさぎよく非を認めて謝罪した。1974年、ドナルド ジョハンソンは、エチオピアのハダールのアファール三角地帯の谷間で、人骨を発見し、学名をアウストラロピテクス アファレンシスに、愛称をルーシーと名付けた。アファールの南の猿人という意味で、ルーシーは、膝関節のかみ合い方と、短く薄い骨盤をみれば、直立歩行していたと考えられた。ジョハンソンがこの骨を組み立てていたころ、メアリー リーキーは、タンザニアのラエトリ地方で、泥と火山灰が混じった地面に350年前の親子と考えられる3組の足跡を発見した。
1974年、ドナルド ジョハンソンが発見したルーシー
直立への進化
脊椎動物
魚類
魚類時代は、体の波動運動で前進した。川に来た古代魚は、海水にカルシウムが含まれているが川にないので、それを備蓄する骨が必要になった。硬い骨を手に入れた硬骨魚類と称される脊椎動物が出現した。水中で進化した脊椎動物の魚は、泳ぐのに適するように直線的な背骨が、体の中央を走り、頭蓋の後ろから、尾鰭の付け根まで、脊椎は一直線、やや上方に後弯している。魚は、背骨で体重を支える必要がないので、椎間板がない。
魚両生類
地上に出現していた昆虫を食べるために、上陸した魚は、両生類に進化して頭が土についているので、背中を縦走する筋肉を用いて、上顎と頭を上げるように牽引するようにして開口するようになったため、頚前湾が出現した。
爬虫類
爬虫類になると脚が長くなり、頭を地面から離したことで顎を開口できるようになり、体の側にあった足が、体の真下にきて、胸後湾が出現した。
ヒトは、脊柱を直立させ、二足歩行を始めると腰前弯が出現した。脊柱はS字状になり、長時間、直立していると、湾曲が強くなり、体幹長は短くなるようになった。この3つの湾曲によって直立した人の衝撃が緩和されるようになった。ヒトの乳児は、生後3か月が過ぎると、首が座り、だらりと下がることはなくなり、頚椎に前湾が形成される。生後10ヶ月になると、はいはいするようになり、胸後湾が出現し、胸椎以下が後湾する哺乳類の形態が出現する。1歳頃になり、つかまり立ちしだすと、腰椎の前湾が出現し、頚椎の前湾、胸椎の後湾、腰椎の前湾という人間特有の形態が形成される。海に出現した我々の先祖の脊椎動物は、湾曲のない背骨の魚だった。それが、陸に上がって背鰭は4本の脚に進化した。その後、頚椎の前湾と胸椎以下の後湾を供えた哺乳類に進化した。
最古の哺乳類と目されるエオマイア
頚が坐ってくる | はいはいしだす |
更に、直立して、腰椎に前湾を作って人に進化した。この背骨の進化の過程を生後約1年間の成長の中で観察することができる。言葉を使い始めるころ歩くことができるようになる。(黒丸正四郎、三宅廉、新生児、日本放送出版協会、1976)地面から衝撃が足、骨盤、背骨、脳が入っている頭蓋へと上方に伝達される。上方への衝撃は回避されるべきなので、足に衝撃が伝達される時に、漆関節、股関節、背骨を屈曲させ、衝撃を吸収している。この3つの湾曲によって形成されたS字湾曲によって衝撃は、1/10に緩和されるといわれている。
人のS字彎曲
脊椎が直線 | 脊椎の湾曲が頭の重さを軽減する |
直立の発達過程(前段階)
人類と類人猿との違いは直立歩行をしていたかどうかとされている。人類進化の第1段階は直立である。直立したのは、直立する準備が整っていた状況にする必要があったからである。
個体発生
シグモンは、2足歩行への適応の過程を3段階で示した。1.姿勢に対する前適応の段階で、多くの機会に2足歩行ができた。2.直立姿勢が高い適応的価値をもつような環境に住んだことで、2足歩行、直立姿勢をとらざるを得なかった。3.直立姿勢が普通の状態になり、それに応じて体の機構も適応してきた。
なぜ立ち上がったか?
その姿勢をとるということは、長期間にわたるなんらかの適応的な目的のために行ったものである。それは、生き残りと繁殖がうまくいくように適応しようとしたのである。その適応性は、過去の産物である。進化的適応環境の中にあった問題に対処するために形成され、繁殖成功度を増大させようとしたのである。爬虫類から哺乳類に進化し、哺乳類の樹上での生活は、平衡性をコントロールする為に、中枢神経の発達し、直立のきっかけになっていると考えられる。なんらかの、適応的な理由のために、高く見せよう選択圧が高まったために立ち上がったと考えられる。
運搬
オーウェン ラヴジョイは、二足歩行は、効果的な移動様式ではない為、物を運ぶための進化だのだという。チンパンジーは、餌を食べにいく時、子供は、母親にしがみついて食事に行くが、ヒトは、餌を持ちかえる必要に迫られ、手の解放が必要になり、立ち上がったと考えた。(ヒトはいつから人間になったか)
エネルギー
ピーター ロッドマン、ヘンリー マクヘンリー(カリフォルニア大学、デイビス校、人類学者)はエネルギー効率論を唱えた。ヒトの二足歩行の方が、エネルギー効率が良く、チンパンジーの四足歩行よりも効果的であるから二足歩行を選択したと主張した。2足歩行は、酸素消費量、膝、踵、股関節などの詳細な生体機構メカニズムを分析すると、2足歩行の方がエネルギー効率が良い移動様式であることが明らかになっている。Sockol,M.D. et.al., (2007)Chimpanzee locomotor energetic and the origin of human bipedalism.Proceedings of Natural Academy of Sciences,USA 104(30):12265-12269
威嚇
人の直立には、同種、他種に強く見せるために直立したのだという説がある。ライオンを調教できるのも、人が直立して、背を高く見せているからであるという。女性には配偶者を通じて自分の地位を高めようとすう傾向があり、女性は背の高い男を交配相手に選ぶようになり、男性は背が高くなるように性淘汰された。進化は、異種間競争よりも、同種間競争が進化に拍車をかける。かくして、背が高い男が女性と関係を作ることができる可能性が高くなり、高く見せようと選択圧がかかった。
求愛
ヒトは、立ちあがった。お見合いで、女性が男性に求める条件に3高、高身長、高収入、高学歴というのがある。ヒトが狩猟生活をしていた頃から、背が高いと、捕食動物の発見、他の動物への威圧感、走行にも有利である。女性は、男の身長は、狩猟の成績、群れの順位に影響すると考え、背が高い男を選ぶように選択圧が高まった。背を大きくみせようと、強くみせようと立ち上がったひとつの原因であると考えられる。進化は、捕食者と被捕食者という関係より、同種間での競争の方がスピードアップされる。(男と女の進化論)他の理論に、背の高い草の向こうを見渡す必要があったから、直立した方が、日射の当たる面積が少なくて涼しいから、同種、捕食動物への威嚇、警戒などがある。
ブラキエーション
直立の原因とする腕わたり説は、小さいサルは、木の上を歩くことができるが、大きくなると不安的になって、ブラキエーションするようになり、胴体だけは、垂直な状態に適応するようになる。さらに、ブラキエーションしているテナガザルを地上に下ろすと直立歩行するように、そうした動物を地上に降ろすと、直立歩行するようになることから。ブラキエーションは、直立の前適応で、直立への移行を可能にしたと考える。しかし、ブラキエーションするようになると、親指は使用しないので退化し、上肢が長くなるのであるが、ヒトの親指は退化していなく、上肢は長くない。(人類進化学入門)チンパンジーは樹上4、地上6の割合であるが、オラウータンはほとんどの樹上生活なので、手が延び、足が退化した。(人類)
ナックルウォーキング
類人猿は、体が大きくなったので、森林を出て、サバンナに降りてきて適応していった。森林依存性の強いゴリラ、チンパンジーは、変形ブラキエーションから、ナックルウォーカーに進化したのに対し、ヒトは直立2足歩行に進化していったと考えられていた。しかし、2000年、アメリカの研究チームは、初期人類の化石の手首にナックルウォーキングの痕跡を見つけ、2足歩行の前段階だとした(人類進化の700万年)。
直立後の変化
直立は、上肢を自由にした。第2段階に移行し、直立すると手が自由になり、顎を使って噛んだり、ひきちぎったり、喧嘩したりしなくなり、手を使って行うようになり、大脳化、顔面、歯の退化が生じさせることになる。
チンパンジーの脳 |
人の脳 |
大脳化
四足動物では、体重W1は前後肢によって支持されるが、頭部の重量W2は前肢の外にでる為に安定が悪く、頸背筋で後方に牽引する必要あり、W2の重量は大きくすることはできず、脳の重量が制限されるが直立することで大脳化が可能になった。前傾姿勢のゴリラは、W1とW2の重力線が一致しないので、臀部が後退し、膝が曲がる。直立姿勢をすればW1とW2との重力線が近接し、ヒトでは一致し、重力線は骨盤を通過し、大脳化が進んだ。(人類生物学入門)
歩行
直立2足歩行は、バランスととるため、脳、特に小脳を発達させた。
手
二足歩行することで、自由になった手が使いかってのよい道具になったとして、ロンドン自然史博物館、ケニス オークリーは著書、「道具製作者としての人間」において、石器の制作と使用が人間の進化を推進したとする説を唱えた。直立することで自由になった手の器用性が増し、それがフィードバックされ、大脳、特に連合野が発達した。ニコラス トス(インディアナ大学)によると、石器作りには、すぐれた運動能力と認識能力の調和が必要なのだという。これらの石器には、食物、肉、食物の痕跡があり、石器を手にして、腐肉動物(スカベンジャー)だったにしろ、ヒトは、動物性蛋白質を手に入れることが可能になり、大脳化を可能にした(ヒトはいつから人間になったか)。歯牙、顎部の縮小により、咀嚼時からの衝撃から解放され、脳、とくに、前頭部が発達し、広い額を形成するようになった。この大脳化は、ヒトの特殊化である(人類生物学入門)。
脳が受け持つ割合なる(ワイルダー ペンフィールド) | 人間の形であらわすと顔、手、舌が大きく |
社会
ロビン ダンバーは、他個体とのかかわり方をする必要性が大脳化を進めたとする「社会的脳仮説」を唱えた。脳の大きさはグループサイズに相関することを示し、関わる個体の社会的情報が多くなることで、新皮質が大きくなったことを示唆した。Byrneらは、霊長類の新皮質の相対的な大きさは、社会の中での裏切りの頻度と正の相関があることを示し、新皮質の拡大が社会的な課題によって大きくなったとする「社会的脳仮説」を支持した。Byrne,R., et.al.,(2004)Neocortex size predicts deception rate in primates.Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciences 271:1693-1699.長年雌雄つがいになっている種が、脳が肥大化している。異性とつれあうということが、脳に社会的情報処理能力の必要性が高め、エレガスタ以降において大脳化させた。Shultz,S,et al.(2007)The evolution of the social brain:anthropoid primates contract with other vertebrates.Proceeding of the Royal Society B:Biological Science 274:2429-2436.脳の拡大は、消化にかけるエネルギーを節約でき、それを脳に回せることが条件だった火を獲得し、調理という行動が社会行動面で変化をもたらし、エネルギーを脳に回せるようになった。脳容量は、体の2%であるが、摂取されるエネルギーの25%のエネルギーを消費している。類人猿よりも大きな脳容量を獲得したホモ エレガスタ以降(190万年前)である。Aiello,L.C., et.al., (1995)The Expensive Tissue Hypothesis.Current Anthropology 36(2):199-221.
集団が大きくなるにつれ、順位、関係維持、処理することが多くなる | 集団が大きくなると、処理するネットワークの数が増え、脳が肥大化し、新皮質の割合が高くなる |
性的信号
ペニスの勃起時の平均サイズはゴリラは3cm,チンパンジーは6cm,ヒトは15cmといわれている。私はこれよりのかなり小さい。ゴリラは一夫多妻制なので、膣内での精子戦争がないの、ペニスが長くなる必要がないが、チンパンジーは乱婚制なので膣内で精子戦争があり、そのためペニスが長くなる必要があった。ヒトが直立し、女性のワギナが進化の過程で、腹側に寄り、後方からでは届きにくくなり、男性のペニスが長くなる必要があった。さらに直立して目立つようになった乳房とペニスを性的信号に発達させて、それを遺伝暗号に書き込み、ヒト全体のDNAに広がって、大きい乳房とペニスが拡がっていったと考えられる。ティモシー テイラーの著書「セックスの先史学」においてヒトのペニスを大きく進化させたのは、女性に提供できるものをライバルの男に見せるつけるために大きいペニスに進化した。さらに、直立したため、ペニスが目立つようになると、ペニスが大きい雄は、女性からは男らしさと生殖能力とみなされ、自信がつき、雌と関係が多くなり、大きく進化していったのだという。体幹が直立し、母親は胸の子を抱くようになり、乳房は腹側から胸部に移行した。
猿の乳房 |
ヒトの乳房 |
上肢
直立し、胸部の前後径を短縮し、幅を拡大したことで、脊柱が胴体の中央に位置するようになった。その結果、肩甲骨は、側方から背部に移動し、上肢の可動域が高まった。前後径よりも幅径が広くなり、肩は側方に突出することによって、仰臥して睡眠をとることが可能になった唯一の哺乳類になった。
下肢
ヒトは、直立したことによって脚は長くなり、把持性を喪失し、直立二足歩行に特殊化した。直立姿勢で、直接影響を受けるのは下肢であり、下肢は強大化し、足指は短小化した。直立歩行をするためには、大腿骨、脛骨などに付着する筋肉が発達し、その筋肉の骨付着面を広くする必要がある為、下肢骨は太くなり、筋粗面が拡大し、大腿骨陵という独特の形態が出現した。幼児は、上肢と比較して、下肢は発達していないが、次第に下肢が発達していく。ここでも個体発生は系統発生を繰り返す。直立には尾は不要であり、ご先祖さまの尻尾を動かしていた尾骨、尾骨筋は退化した(人類進化学入門)。
顔
咽頭
ヒトは、直立し、大後頭孔が下方にずれるに従い、通り道が曲がることになり、この曲がった部分に空隙が生じ、さらに、直立した為、咽頭が垂直になった結果、重力によって、胃袋などの他の臓器と同様に咽頭も下方に下がり、声道が長くなり、複雑な音声を混合できるようになった(早すぎた二足歩行)。
無顎類 | 哺乳類 |
狭鼻類 |
Cranial Base:CB:(頭蓋底): Na-Sella-Ba
姿勢は頭蓋顔面の成長に影響し、頭蓋の屈曲に依って、個体発生時の成長方向、顎の位置が決定される。Slavicekは、ヒトは直立し、Cranial Base(頭蓋底)が屈曲し、ホモサピエンスに移行する時に、脳の発達がその傾向に拍車をかけていることを示し、不正咬合はCranial Base(頭蓋底)に特徴があることを明らかにした。さらに、彼の親友だったRickettsは、CBは、鼻腔の開き方、呼吸のための気道のスペースに相関していることを明らかにした。
Mean value:130±5゜
猿人 |
原人 |
旧人 |
新人 |
顎関節
爬虫類や哺乳類の顎関節は、咬合平面と同じ平面にある。霊長類になると顎関節から距離ができて顎関節間距離が長くなっている。赤ちゃんの咬合平面は顎関節と同じ平面にあるが、成長するにしたがって、顎関節は咬合平面から離れていく。顎関節においても個体発生は系統発生を繰り返している。爬虫類や哺乳類の顎関節は、咬合平面と同じ平面にある。霊長類になると顎関節から距離ができて顎関節間距離が長くなっている。赤ちゃんの咬合平面は顎関節と同じ平面にあるが、成長するにしたがって、顎関節は咬合平面から離れていく。顎関節においても個体発生は系統発生を繰り返している。
爬虫類、哺乳類の顎関節は咬合平面上にある | 霊長類の顎関節は咬合平面より上にある |
重力に対抗する為に筋肉で支えられていた顎関節、ぶら下がる為に血管系、後関節窩のパッドに於いても変化が及んだ。人間が直立する様になり、下顎は靱帯に依ってささえなければならならなくなり、蝶形骨下顎靱帯と茎突起下顎靱帯の2つの靱帯が頭蓋と下顎とをつなげている。側頭下顎靱帯は人が直立してから発達したもので、重力に対して、側頭骨に対して下顎を保つ役割を持っている.防御機能である。事故で、下顎頭が耳を障害しない様に守り、外傷の力を上方に向けるようになった。 Slavicekは、逆に、後退した頭蓋、顎の位置が直立する為の前提条件になっていたことを示した。脳頭蓋の発達は側頭骨を側方に拡大し、顎関節も幅径を増した。
SCM(胸鎖乳突筋)
頭が脊椎の上の乗った為、頭の、左右、回転運動をする胸鎖乳突筋が発達し、その付着部である乳様突起が肥大化した。この乳様突起が、猿かヒトかの判定に使用されている。(人類)この乳様突起は、類人猿は小さく、原人、旧人、新人となるに従って増大化している。鎖骨と胸骨から発した胸鎖乳突筋が停止する。胸鎖乳突筋は、一側が機能すると側屈するが、左右両者が機能すると、頭部を前屈する。4足動物は、頭を後方から牽引する背筋が発達するが、直立すると、頭を前方に牽引する胸鎖乳突筋が発達し、乳様突起の発達は、頭部の直立姿勢に対する適応を示すものである。姿勢が悪くなるとSCMの角度が変わり、くいしばりを誘発し、TMDに発展させる。 SCMの角度は、平均60だが、これが垂直的になるとTMDを誘発しがちになる。
椎骨
頚椎の棘突起の退化
四足性のサルは、うなじ筋が頭骨を後下方から牽引して支持するが、ヒトは直立することによって、うなじ筋の負担は軽減され、うなじ筋、その筋が付着する頚椎の棘突起が退化した。
椎骨の中央が髄核(淡い藍色)、周囲が繊維輪(濃い藍色)、脊柱管の大きい神経が馬尾、左右に出る神経が神経根、下方に突出したのが棘突起
骨盤
前述のメアリー リーキーは、アフリカのタンザニアの350万年前の地層から2足歩行の足跡を発見した。親指が前方を向き土踏まずがある。火山の噴火から逃れようとした時に足跡が残されたと考えられる。足跡を残したアウストラロピテクスアファレンシスの骨盤の中に、人類の骨の誕生の秘密が隠されていた。人類は、600万年前、チンパンジーと共通の祖先と別れた。両者は、正反対の腰をもつように進化した。チンパンジーの骨盤は、人と比較し、骨盤が縦に長くなっている。4つある腰椎の内、下の2つは骨盤の中に入っているので、腰椎はほとんど動かず、腰椎を守るために、頑丈な骨盤を進化させた。
足跡を残したアファレンシスの骨盤 | 350万年前のアファレンシスの足跡 |
腸骨
直立すると、ヒトの骨盤は、上半身の重量を支えるので、幅広く大きくなり、腸骨は扇型に変化する。立ち上がった人の腰椎は前後左右に動くようになった。後方への反りは重要な意味をもっていた。自由に動く腰椎を後方に反らせたことによって直立が可能になった。1番下方の腰椎は、4足歩行のなごりで前傾を保っている。肋骨と骨盤の間に空間が形成されて、体をひねることが可能になった。2足歩行になり、上体の重さがすべて腰にかかるようになった。文明社会で想定外の使われ方をした為に、腰痛が花開いてしまった。同じ姿勢の維持、同じ動きのし過ぎが始まったばかりで、それに対して人は適応できていない。私もひどい腰痛持ちだが、腰痛の原因はほとんど解っていない。診断名のつくのは、わずか15%にしかすぎないといわれている。
直立した骨盤 |
最下方の腰椎の前方傾斜 |
類人猿は、腸骨は発達したが、恥骨と座骨の発達が弱く、立てるが、歩行はぎこちない。直立した為、骨盤は、重い内蔵を下から受けるように支える必要があり、腰痛、胃下垂が伴うようになった。姿勢の変化で、産道が曲がり、難産になった。骨盤は、左右の腰骨(寛骨)と仙骨からなり、この骨盤を介して、脊柱にかかる上体の重さが下肢へと伝達される。胸部の前後径を短縮し、幅を拡大したことで、脊柱が胴体の中央に位置するようになった。その結果、肩甲骨は、側方から背部に移動し、上肢の可動域が高まった。(人類)類人猿は、腸骨は発達したが、恥骨と座骨の発達が弱く、立てるが、歩行はぎこちない。直立した為、骨盤は、重い内蔵を下から受けるように支える必要があり、腰痛、胃下垂が伴うようになった。姿勢の変化で、産道が曲がり、難産になった。骨盤は、左右の腰骨(寛骨)と仙骨からなり、この骨盤を介して、脊柱にかかる上体の重さが下肢へと伝達される(人類進化学入門)。チンパンジーの骨盤を支える腸骨は、水平に広いが、直立したルーシーの腸骨は湾曲し、左右の腸骨を繋ぐ仙骨が幅広くなり、骨盤が丸身を帯、大きな産道になった。チンパンジーの腸骨が上下に長く胴長で、後ろ脚で立つと、体の重心は、股関節より上方に来るのでこの胴を大殿筋で直立を保てない。ヒトは、腸骨、胴が短縮し、体の重心が股関節に近づいて、大殿筋が大きくなり大殿筋にかかる負担が軽減される。ヒトとチンパンジーの相違は、骨盤への中殿筋、小殿筋の付着の仕方、大腿骨の動きに差異が存在する(早すぎた二足歩行)。自由に動く腰椎を後方に反らせ、肋骨と骨盤の間に空間が形成されて、体を捻りが可能になった。反りと捻りを何度も繰り返し同じ姿勢の維持、同じ動きで、腰への負担の増加に対した。
チンパンジーの骨盤には、4つある腰椎の内、下の2つは骨盤に入っているため、腰椎は動かせない。
直立したための進化の傷痕
ストレスの感覚情報が感情、情緒の中枢に伝達される時に放出される神経伝達物質が、気分を落ち込ませるだけでなく、姿勢を悪くし、自律神経のバランスを乱し、体全体の機能に影響を与える。スタンフォード大学ユージン カレギー(タンフォード大学)は、気分が沈みがちで悲しい、不安でじっとしていられない人は、30倍も重い腰痛に罹患しやすいことを、カミット デービス(シンシナティ大学)は、心理的ストレスを与えると、背筋の緊張、腰椎に加わる負荷が高まることを発見した。そのような理由から腰痛や顎関節症の治療が変わりつつある。腰痛、顎関節症患者の多くが心的問題を抱えており、心療内科が連携し、心理的ストレスを和らげることが主眼になってきている。
上:ストレスなし、下:ストレス(背筋) |
顎関節症
アムステルダム大学解剖学教授のルイス ボルクの人の胎児化説によると、猿は成長過程で、脊柱尾部や膣が真っ直ぐになるのであるが、人は大人になっても胚期の脊柱尾部の湾曲状態は変化せず、又、顎が前方に突き出さず、顔面が平坦で後退傾向にあるので幼形のまま大人になった性的に成熟した猿の胎児であるという。顎が下がっているからバランスを取ろうと頭を前に出すので、それを支える頚部の筋肉が疲労し、舌骨筋群が緊張し顎が後退し不正咬合に発展させ、後部神経を圧迫し、顎関節症を誘発する。姿勢が悪いと頚部の筋肉が緊張し、くいしばりを誘発し、顎関節症に至らせるので、歯科医にとって、ストレスマネージメント、認知行動療法が要求されるようになっている。環境適応のみだけでなく、社会的淘汰圧、例えば、性淘汰を含めた社会相互作用によって、顎が前方に突出せず、後退傾向にある幼形を維持するようになった。
顎関節症、腰痛の慢性疼痛
バニア アプカリアン博士(ノースウェスタン大学、脳生理学)は、慢性腰痛を訴える患者は脳のどの部分で痛み訴えるか、MRIで調べた。腰痛が起きていない時に、外から腰に痛みを与えると、脊髄を通った痛みの信号は視床を経由し脳全体に広がる。慢性腰痛の場合、視床は活動せず、思考を司る前頭葉が活動している。前頭葉、ストレスや不安など、好ましくない感情の時に活動する部分である。慢性疼痛は、感情を司る前頭葉が刺激され痛みとなって出現し、痛みなどの感情的な反応をコントロールできなくなっている。痛みの記憶が増幅され、長く持続されるようになっている。文明社会が、腰に想定外のストレスを加え慢性腰痛や慢性顎関節症を誘発している。
脊髄を通った痛みの信号は視床を経由し脳全体に広がる | 慢性疼痛患者は、感情を司る前頭葉が刺激され痛みとなって出現する |
顎関節症、腰痛の慢性疼痛の原因
顎関節症、腰痛の治療が変わりつつある。腰痛患者さんの多くが心的問題を抱えており、整形と心療内科が連携し、心理的ストレスを和らげることによる治療が始まっている。 痛みの刺激が脊髄から脳に伝達され、脳で痛みを感じる。この時、脊髄で、交感神経、運動神経が興奮する。交感神経が興奮すると、血管が収縮し、運動神経が興奮すると、筋肉が収縮する。これらの血管、筋肉が収縮すると、発痛物質が放出され、再度、刺激される。悪循環のスパイラルに入ってしまうと、元の刺激が無くなっても、痛みの悪循環に入って慢性痛が持続するようになると、末梢神経、脊髄、脳が過敏になり、痛みが痛みを呼ぶ悪循環が生じる。
慢性疼痛のスパイラル
スワンソン(メイヨクリニック、疼痛学者)は、日常生活の不適応は、自己評価を低下させ、欲求不満を誘発しそれを代償できない場合は、慢性疼痛で代弁するのだとした。痛みのリセプターからのインプット(情報)は、情報や行動としてアウトプットされる中枢統合システムは、安全(安心感)システムや福祉(幸福)システムと並ぶ機能である。安全システムの慢性的な機能不全が不安を誘発し、福祉システムの慢性的な機能不全が抑うつを誘発し、中枢統合システムの慢性的な機能不全が慢性疼痛の原因と考える。外的な刺激が、安全(安心感)システムに与えられると恐怖、福祉システムに与えられると悲嘆、情報処理システムに与えられると慢性疼痛が生じる
Okesonは、顎関節症の慢性疼痛の患者さんに対し、抗うつ剤の投与を勧めている。慢性疼痛とうつ病との関係に3つの考え方がある。1.慢性疼痛は、うつ病の症状である、という考えがある。うつ病は周囲の体面を気にして、情緒的な症状を訴える代わりに体の痛みを訴える。慢性疼痛は、うつ病を治療で寛解するのがこの考えの基礎。2.慢性疼痛がうつ病を誘発する、という考えがある。慢性疼痛の管理でこのうつ病が改善されるのがこの考えの基礎になっている。3.慢性疼痛とうつ病は、共通した病理の違った表現形である。という考えがある。慢性疼痛は、うつ病の亜型であると考え、うつ病を誘発しやすい人は、慢性疼痛を誘発し、慢性疼痛の多くが抗うつ剤で治るのがこの考えの基礎になっている。
頚部痛
首が痛くなるのが、首の構造自体に特徴があり、ヒトは直立に頭がカンチレバーになり後方で牽引する必要がある。首は前後左右に動くので、加齢変化が早い。骨変化が神経に及ぶと手足が影響される。筋肉の疲労によって、疲労物質が蓄積して血流を悪化すると痛みの悪循環を起こし、慢性疼痛を誘発する。脊柱の上から7個までが、頸椎、首になる。脊柱は椎骨が積み重なった構造になっている。その間にある椎間板は、軟骨は、首を動かしやすくしたり、ショックを吸収する。頸椎の中に中枢神経の一つ、脊髄が通っていて、その脊髄から神経根という末梢神経が腕や手に伸びている。痛みは、骨に原因がある場合と、神経に原因がある場合がある。
頸部痛において、頚椎に関連したものに頚椎捻挫、むち打ち症、骨折などがある。頚椎の変化が神経に症状をもたらすものに、頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯硬化症等がある。神経に関連したものに神経にできる脊髄腫瘍がある1.首を前に倒すと疼痛がでる場合、神経、特に、脊髄が障害されている可能性がある。2.首を後に反らすと疼痛は、椎間関節から起こる疼痛に特徴的である。3.首を後に反らすとしびれが出現する場合、神経根が障害されている可能性がある。1-3がなくて、休むと良くなる場合は、原因は筋肉にあり、ストレッチ、マッサージで疼痛が解消されることが多い。ねちがいは姿勢による筋肉に問題があり、頚を冷やさないようにすることである。
頚椎症
頚椎症は、椎間板が、老化して劣化すると、上下の頚椎が不安定になり、椎間板から骨棘が出てきて、安定を図る。横から出現した骨棘は、神経根を圧迫し、疼痛、しびれを誘発するこの一連の変化を頚椎症という。頸部痛の原因で最も多い。椎間板が飛び出し、神経を圧迫することを椎間板ヘルニアという。長期化すると、感覚がマヒし、痛みが消失していることがある椎間板ヘルニアは感覚麻痺を来す |
頸椎症 |
変性すべり症 |
頚椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の中に髄核、周囲に繊維輪があるが、繊維輪に亀裂ができるとその亀裂から髄核が飛び出て神経を圧迫して症状を誘発することである。脊髄症とは、髄核のヘルニアが後に出て、脊髄を圧迫することである。
椎間板症
椎間板症とは、椎間板に当たるまで飛び出ると症状を起こす場合のことである。頚椎椎間板ヘルニア、脊髄症がある。
神経根症
神経根症は、神経根が圧迫されたことが原因で生じる。原因は、頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症があり、症状は、首の痛みだけでなく、手にしびれ、痛み、冷感を誘発する。神経根症とは脊髄から手に出る枝の神経根が圧迫されると手にしびれが出たり、圧迫が強まると麻痺が出現することである。神経根症は痛んでいる神経根をみつける必要がある。首の骨から出ている神経は、左右8本づつあるが、最も障害されるのは、7番目の神経根である。7番目の神経が障害されるとひじを伸ばす力が衰える。腕を横に水平に伸ばし、90度に曲げ、その曲げた状態からまっすぐに伸ばす力が7番目の神経によるので、この神経根が圧迫されているとこの力が衰える。7番目の神経は中指に来るので、中指にしびれの症状を誘発する。
後縦靭帯骨化症
後縦靭帯骨化症は、脊椎と頚椎との間にある後縦靭帯が骨化し、肥厚し、神経を圧迫し、疼痛、麻痺の原因になり、手足の脊髄反射の反応を示さなくなる。
脊髄症
脊髄症は、棘が後方で形成され脊髄が圧迫されて生じることで、原因として、脊髄腫瘍、後縦靭帯骨化症があり、脊髄は神経の幹であるので、首の痛みだけでなく、手足の両方に症状を伴う。神経根は手の方にいっているが、神経根症は首と手のみに症状が出現する。頸椎椎間板ヘルニアでも脊髄症になることがある。左右別々に、手を前に出し、結んで開いてを、しっかり、早くやらせると、通常、10秒間で20回はできるのであるが、脊髄症の場合、20回はできず、遅くなる。
腰
脊椎の1部である腰椎は5つの骨で形成される。その1つ1つの骨を椎骨という。椎骨の間にあるのが椎間板であり衝撃を和らげるようにクッションの役割を担っている。背骨の中の椎体と椎弓の間の空間に馬尾が入って、足や内臓に繋がっている。椎体を上から見ると、大きな神経馬尾が通っている空間を脊柱管という。馬尾から両側に出ている神経を神経根という。椎骨が変形したりして、神経を圧迫して疼痛を誘発する。腰椎の周囲に筋肉があり、それによって疼痛の程度が影響される。
馬尾 |
椎骨の中央が髄核(淡い藍色)、周囲が繊維輪(濃い藍色)、脊柱管の大きい神経が馬尾、左右に出る神経が神経根 |
体の重心の位置は床から頭上までの高さの、下から約55%という上方にある。体の重心の位置や重心線も揺れて、直立を可能にしている。足が長いということは、それだけ体の重心が上にあることになり、不安定度を増すことになる。姿勢における正常とは、耳と眼を結んだ水平面は水平、脊椎の湾曲も軽度、骨盤が後方に傾斜する程度が少なく、股やひざの関節の曲がり方もリラックス型よりも少ない。重心は、股の関節の回転軸を通る垂直線よりも後方にある(早すぎた二足歩行)。
腰痛
顎関節症が顎関節に痛みをおこす疾患の総称であるように、腰痛は腰に痛みをおこす病の総称である。2足歩行を採用するようになったので、上体の重さがすべて腰にかかるようになった。前かがみの姿勢や心理的ストレスは、背筋などの筋肉の緊張させ、腰椎に負荷を加えることになる。2足歩行になり、上体の重さがすべて腰にかかるようになった。文明社会で想定外の使われ方をした為に、腰痛が花開いてしまった。同じ姿勢の維持、同じ動きのし過ぎが始まったばかりで、それに対して人は適応できていない。腰痛の原因はほとんど解っていない。直立姿勢をとるから、腰痛が起きるように、からだの設計の妥協によってもたらされる。自然淘汰によって、適応を生みだし、維持している。背筋の大きな力が椎間板に200kを超える負荷がかかる。
椎間板
ブラキエーションにおいて、背骨は胴体や足の重さのせいで牽引され、椎骨の間の椎間板への負荷が軽減される。ヒトが直立すると、椎間板には、それより上にある体の負荷が加わり、押しつぶされ、外側にはみ出し、椎骨全体で約2.5cm長さが短くなる。就寝によって、その長さが元に戻され、元の形体に戻り、身長も長くなる。加齢によって、椎間板の弾力性を失い、復元率も減ってしまうので、圧縮された状態を維持されるので、身長が短くなってしまう。
どうして腰痛が生じるか?
腰部には、体重の2-3倍の力が負荷されるという。背骨、腰骨の圧縮に耐える力が、50歳前後で60%に、70歳前後で約40%に低下する。モリスが試算によると、10キロの荷物を持つと、100キロの力が腰部に負荷されることになるが、息を止め、腹筋を働かせたりして、36キロの力が腰部に加わる。さらに、60キロの人が、全体重の半分の上体の重さ、30キロが加わる。つまり、10キロの荷物を持つと、66キロの力が腰椎に負荷されることになる。常に、息を止めたり、腹筋を使ったりできる状態でないので、腰椎に相当な負荷が加わることになる。
腰痛症
(筋膜性腰痛症)
筋膜性腰痛症(腰痛症)は、骨に異常がない場合を腰痛症とされる。腰痛で最も多く、原因は、筋肉疲労、パソコンなどで同じ姿勢や悪い姿勢、過度の運動による筋肉の疲労などが考えられる。
椎間板症(ぎっくり腰)
椎間板障害には、椎間板症と椎間板ヘルニアがある。ぎっくり腰とは、椎間関節の捻挫や、急に起こった筋膜性、椎間板性の腰痛症を総称していう。椎骨は、腹側の椎体と、背側の椎弓で形成される。椎骨間にある椎間板は軟骨で、クッションの機能を果たす。椎間板の中央は圧力に抵抗する髄核と繊維輪が取り囲む。椎間板症とは、髄核の水分を失い、繊維輪に亀裂が入り、脊柱を支える椎間板の力が衰え、姿勢が不安定になり腰痛が出現する。症状は、鈍痛で、腰のこわばり、動作時、前かがみ、椅子から立ち上がる時、ひねり、寝がえりに腰痛が出現する。
姿勢指導
筋肉が腰痛の原因になっている場合、運動療法がおこなわれる。筋肉に起因する腰痛の原因が1.疲労、筋肉負担の場合、筋肉のストレッチを行う。2.原因が筋肉の衰えによる場合、高齢者、運動不足に対し、腹筋、背筋、骨盤周囲の筋力強化する。3.原因が姿勢に起因している場合は、同じ方向ばかりに荷物をもっていたり、同じ姿勢を維持し、姿勢が悪い場合、正しい姿勢を学習させる。太ももの裏側、お尻と腰のストレッチを呼吸を止めないで、痛みのないところでまでストレッチする。腰痛に対する運動とは、ストレッチ、筋肉強化、姿勢改善である。
姿勢に大切な4つの筋肉がある。1.腹直筋(腹筋)、2.脊柱起立筋(背筋)、3.大臀筋というお尻の筋肉は背骨を下の方が支える筋肉、4.腸腰筋は腰椎と大腿骨をつないでいる。これが適正に働くことによって、姿勢を保ち骨盤を安定化させる。腹筋、背筋、大臀筋、腸腰筋の骨盤周囲の筋力強化の運動を行う。骨盤の動きが悪くなっている場合、左右の筋肉のうち、一側が緊張して硬くなり動きにくくなっている。骨盤の動きが悪化すると腰椎に筋肉に負担がかかり、腰痛を誘発する。骨盤の動きを取り戻すために、骨盤を動いている状況を作る必要がある。右に傾いているということは、右側の筋肉に負担がかかっていることになる。姿勢が悪ければ腰痛が誘発される。この場合、ストレッチ、背筋、腹筋の筋力強化運動、正しい姿勢にすることが要求される。良い姿勢とは、筋肉、骨格、神経に負担をかけない姿勢である。その正しい姿勢を客観的認識する必要がある。背を高くみせ、空想で、頭にてっぺんに糸をつけて、それを手で引っ張って、踵が地面に着いた時の姿勢が良い姿勢である。
椎間板ヘルニア
原因
椎間板ヘルニアは、繊維輪にできた亀裂を通して、椎間板の髄核や繊維輪の1部が後方に飛び出して、後方の神経を圧迫し、腰痛、坐骨神経痛を誘発する。急性期には腰痛がある。重いものをもつ、くしゃみ、体のひねるなどが発生のきっかけになることが多い。椎骨の後に足に行く神経があり、腰のみならず足にも痛みを誘発し、また、お尻から足にいたる痛みである坐骨神経痛が出現する。変性すべり症の骨が滑った原因も椎間板の劣化で、強度が低下し、前に椎骨が滑った為に神経が圧迫されて疼痛が出現する。
症状
足の力が落ち、感覚が鈍くなるという運動障害、知覚障害が出現することがある。大きなヘルニアの場合、おしっこが出にくい排泄障害をきたすことがある。飛び出したヘルニアが吸収され、圧迫が自然に解消され、8割以上は保存療法のみで改善される。急性の腰痛に続いて、お尻から脚にかけての痛みの坐骨神経痛、足の力が落ちたり、おしっこが出にくくなる排泄障害を誘発する。
治療
椎間板ヘルニアの急性期には、非ステロイド系、筋弛緩剤などの薬物療法、あるいは、局所麻酔、ステロイドを神経の周囲に注射する神経ブロックが行われる。また、腰を安静にする為にコルセットなどの装具療法が行われる。ある程度、疼痛が収まり慢性的になれば、温熱療法、腰を暖めて、血流をよくする。また、30-40kくらいで牽引することができる。さらに、慢性期の痛みが軽減した時にストレッチ、腹筋、背筋の強化などの体操療法を長期にわたって行ってもらう。
脊椎の1部である腰椎は5つの骨で形成される。その1つ1つの骨を椎骨という。椎骨の間にあるのが椎間板があり衝撃を和らげるようにクッションの役割を担っている。背骨の中の椎体と椎弓の間の空間に馬尾が入って、足や内臓に繋がっている。椎体を上から見ると、大きな神経馬尾が通っている空間を脊柱管という。馬尾から両側に出ている神経を神経根という。椎骨が変形したりして、神経を圧迫して疼痛を誘発する。腰椎の周囲に筋肉があり、それによって疼痛の程度が影響される。腰痛は、男性は悩みの第1位、女性は肩こりにつぐ2位である。ペインクリニックでは、神経をコントロールして、行動療法は筋肉をつけて疼痛が出現しないようにする。(ここが知りたい腰痛 )
椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症などで、脚にも症状が出るものは、手術の対象になりがちになるという。外科的に椎間板、椎骨を治療していくのである。一般に神経障害が進行し、保存療法の効果が出ない場合、あるいは、尿がもれる、出にくいなどの排泄障害の場合は手術の対象になっているようである。椎間板ヘルニアとは、椎間板が変形して飛び出して足に繋がっている神経根を圧迫し、疼痛、しびれが出現する。馬尾が圧迫されるとさらに重篤になる。2つの手術法がある。1.経皮的髄核摘出術は、注射器で髄核を吸入して飛び出したヘルニアが下が神経根の圧迫を除去する。2.後方椎間板摘出術は、後方から骨を除去し、髄核を除去する。
椎間板ヘルニア
Exam
椎間板ヘルニアは、坐骨神経が圧迫されて前かがみになると、臀部から大腿の後半にかけて疼痛が走る。下肢伸展挙上試験(SLR試験)で下肢後面の痛みが強くなるのと同じ原理で、坐骨神経が圧迫されて生じる。膝関節を伸ばしたまま、下肢を挙上し、70°未満の角度で、大腿から下腿後面にかけて疼痛が誘発された場合は陽性ということになる。
脊柱管狭窄症
黄色靭帯と神経との間にできるを脊柱管というのであるが、脊柱管狭窄症は、髄核が劣化すると、空気の抜けたタイヤのように横幅が拡大する。黄色靭帯も肥厚したりたるんだり、関節が肥大化したりして脊柱管狭窄症が生じる。
原因
脊柱管狭窄症は、加齢、骨の変形とともに、脊柱管が狭窄してくると神経が圧迫され、脊柱管狭窄症の症状が出現する。
症状
症状は、腰痛は軽いが、立っている時にしびれが強くなる。イスに座っている、おじぎをするなどで症状が快方に向かう。間欠は行といって、歩行時に障害が出現する。間欠は行は、歩き始めると腰痛、あしのしびれが出現し、少し休むと症状が軽くなり、歩くことが可能になる。長い距離の歩行が困難になる。 分類
脊柱管狭窄症は、馬尾型と神経根型に分類される。1.馬尾型は、馬尾が障害される場合で、馬尾が全体的に障害を受け、症状は両側性である。疼痛より足のしびれ、あしの脱力という症状が多い。馬尾障害が進行すると小水が出にくくなる排泄障害が出現する。2.神経根型は、神経根が障害された場合で、神経根の右か左かが圧迫を受けて症状が出るので片側性である。症状はしびれよりも疼痛が強い。まれに両者が合併した混合型の人もいる。
脊椎管狭窄症
脊椎管狭窄症は、歩行や背伸びで疼痛がひどくなる。間欠性跛行は脊椎管狭窄症の特徴で、数分歩行すると腰と足が痛くなり、休むと歩けるようになるという症状を間欠性跛行という。ドイツではショーウィンドゥの病気をされている。血管狭窄が進行すると疼痛(Pain)が続き、足先は蒼白(Pale)になり、その領域の脈がとれなくなり(Pulseless)、感覚異常(Paresthesis)、運動麻痺(Paresis)が起こってくる。この5つがそろうようになると血管拡張剤の内服や点滴では効果がなくなり壊死に陥る可能性が出現する。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、更年期以降の女性に多い病気で、骨からカルシウムが溶出して、骨がつぶれて、腰痛が出現する。腫瘍は、骨に癌などができ、感染症は、骨が感染し、骨がつぶれて腰痛を誘発する。
老人ホームで、牛乳の自動販売機を設置し、牛乳を飲む習慣とつけた老人は、年で平均2.2cm縮んだにすぎなかったが、飲まなかった平均年齢79歳の女性は3.9cm縮んだ。緩やかな腰の曲がりは骨粗鬆症に由来し、極端な腰曲がりは、腰椎の変性疾患に由来する。骨が弱化するにつれて、円背(えんばい)の頂点が背中から腰に移行し、円背の曲がりが強くなっていく。上体が水平になるようにして歩行する老人は、腰椎錐体の変形のみならず、下部腰椎の骨棘が生じたり、椎間板が変性して、脊柱管に突出した結果であることが多い。脊柱管狭窄症では、前屈位で歩行するようになる。
姿勢
直立姿勢は、約10万前から1万年前に起こった。哺乳類の腹腔内の内臓は、垂れ下がるように膜で被覆されている。ヒトは、直立すると、その膜は下方に垂れ下がり、消化システムが詰まり、内臓癒着、痔、鼠径ヘルニア、下肢の圧を上昇させ、静脈瘤、足首のむくみを起こす。脳内の血圧の低下は、めまい、視覚喪失を誘発する。心臓が血液を押し出しが弱いと、肺や足に欝血し、息切れ、足首の腫れ、うっ血性心不全を誘発する。欠損を誘発する遺伝子は、その損失を超える利益をもたらしているために残されている。直立姿勢をとるから、腰痛が起きるように、からだの設計の妥協によってもたらされる。自然淘汰によって、適応を生みだし、維持している。
姿勢が悪いとどうなるか
福島県立医大、菊池臣一学長(整形外科)は、椎間板にセンサーを入れて負荷を計測した。体重72Kのヒトが立っている場合、椎間板に62kの負荷がかかっている。前かがみになると負荷は235kになった。これほどに力が加わるのは背筋が深く関与していた。前かがみになると、体の体重を支えようと背筋が後方に牽引する。背筋の大きな力が椎間板に200kを超える負荷がかかり椎間板に悪影響し、腰痛を誘発することを証明した。腰痛の2大原因の一つに姿勢にあることを証明した。その他、心理的ストレスである。アンドリュー ムーア博士(ロチェスター工科大学)は、アブフレイダの発掘を行い、農耕が始まった時と背骨の変形が一致し、変形の原因を突き止め、長時間の無理な姿勢が背骨の変形を招くことを発見した。鍵となったのが、穀物の種と2種類の石だった。パンを作るための、前かがみでの穀物の粉ひきを1日2-4時間続けると椎間板は無くなり障害になっていたことをが判った。農耕文明は利益をもたらしたが、代償を強いることになった。腰痛の起源は農耕と一致し、種まき、収獲など、長時間の前かがみする姿勢をとるようになった。
小麦ひき |
農耕 |
姿勢が悪いと
疼痛
悪い姿勢や精神的ストレスは、後頭部からうなじが多いが、めかみ、眉間、顎などに痛みをもたらす。痛みは、持続的であり、発作は無いがこめかみや後頭部がしめつけられる感じ、頭全体が万力、鉢巻で締め付けられるような感じ、帽子を被ったような感じ、首筋のひきつけるような感じ、首や肩のこった感じという形容が伴う。気遣い多忙等で精神が緊張し、慢性的な焦り、不安といった精神状態が存在する。頭や首に痛みが存在する場合にこれが原因になって、姿勢や顔つきの異常となる、痛みは、更に、筋緊張の原因になる。
姿勢の悪化の原因
どうして姿勢が悪くなるのか
頭頂葉の角回(電気刺激)を興奮させると、体外離脱体験、体の変形体験を誘発する。右視野に映ったものは、左脳に、左視野に映ったものは、右脳に送られる。右視野で見た情報が左脳に送られた時しか、映された情報が何か判らない。その理由は、言語野が左脳にある為である。心臓、肝臓も一つ、元々、右利き、言語が持つと半球の大きさが変化し、頭の姿勢も変化する。人は、顔を右を回す傾向が出現し、斜傾が生じる。キスする時、ほとんど、顔を右に向けてキスする。
Stress
ストレスの感覚情報が感情、情緒の中枢に伝達される時に放出される神経伝達物質が、気分を落ち込ませるだけでなく、姿勢を悪くし、自律神経のバランスを乱し、体全体の機能に影響を与える。脳や脊髄という中枢神経系でプログラムされた指令内容が末梢神経に伝達され、体内の筋肉にプログラムどうりに一定のパターンの収縮を起こし、それに見合った背骨の形態が出来上がり、一定の姿勢が形成される。姿勢のプログラムは、十代半ばまでにはすべて中枢神経に組み込まれる。姿勢のよしあしが背骨の発育に影響したり、背骨が曲がってしまうということは考えられない。/子供の背骨の病気を治す
前方頭位
頭を上方に向け、頭を前方に出す前方頭位のことをExtension、頭を下方に向けることをFlexionと呼ばれている。猫背にして頭を前に出す前方頭位の状態を維持していると、前方にある頭を後曲筋、僧帽筋、頭板状筋など支えようとしてこれらの筋肉が過緊張し、後頭骨と環椎の間にある後頭神経や血管を圧迫が圧迫され、ひたい、こめかみ、目の周囲などに頭痛、あるいは疼痛を誘発しがちになる。
姿勢に関わるのが、内耳の蝸牛のそばの三半規管と耳石器である。これらの器官によって感知された姿勢は、電気的信号として脳幹を経由して、小脳の伝達される。小脳は、その情報に基づいて体のバランスをとって、姿勢を決定する。
コブ角
前方頭位にしていると、後方の頚部筋肉の牽引しようと筋肉の過負荷が強まり、頭だけでなく、肩が前方に出てくる。頭、肩によって、胸部の筋肉である胸筋が緊張し、発痛点が生じる。収縮した胸筋に拮抗して、後部の頚部の筋肉、特に、僧帽筋が収縮し、両方の前後の筋肉、胸筋や僧帽筋に発痛点が出現する。その為、姿勢の問題に取り組み、この2つの筋群の同調を直し、胸筋、僧帽筋の中にある発痛点は、除去しなければならないことになる。つまり、姿勢の問題を解決しないと、頭痛の構成要素である首の後方の筋肉にある圧痛点を除去することは困難になるのである。
姿勢指導
患者さんを壁の前に立たせ、踵を壁に接触させる。後頚部は、壁から約6cmの距離が理想である。この距離が大きければ、前方頭位、前傾姿勢という事になる。肩、背中、腰は、壁と接触し、首は、壁から約6cm離れるくらいが良い姿勢であると考える。姿勢の悪い患者さんに対し、体を起こすこと、前を向くこと、猫背を止めさせ、身長を高くみせるようにすること、肩先が後方にある事が維持させるように指導する。姿勢改善において、大事なのが、可動性:Mobilityであるので、例えば、歯科医が、前右方に姿勢を傾けて仕事をしているので、後方、左側への体の伸展を、衛生士は、前左方に傾斜しているので、後方、右側にストレッチして姿勢を改善する必要がある。
前方頭位
猫背によって、頭が前方に出てくると後方の頚部筋肉が頭を牽引することによって過負荷を呼び、肩が前に出てくるようになる。肩の姿勢を評価する為に肩甲棘を診る必要がある。一側の肩が低いと、その側の骨盤は高くなる。例えば、右骨盤が高ければ、右肩が低くなり、頚椎は、右に傾斜しだす。それを補う為に、脊椎は左斜めに傾斜しだし、又、それを補う為に、胸椎は筋肉に牽引され、右に曲がり、頭をまっすぐにする為に、左肩の筋肉が代償的に収縮する為に、左肩が上がってくる。又、左肩上がりは、右肩甲挙筋が関与する筋筋膜疼痛症候群をあるいは、上部僧帽筋と左肩甲挙筋の不随意スパズムに起因しているかもしれない。 頭を出すと頚椎の前方カーブが強調され頸部が緊張する。頭の重さ:W、重心線Gから頭までの距離:X、重心線Gから首筋を後ろに倒す筋肉までの距離:Y、頭の重さ:Wに対抗してバランスをとる首筋の筋力をWとすると、W×X=M×Yになる。頭が重心から前に出るとMの値は大きくなり頸部が緊張する。頭の重量W=5kg、重心からの距離;15Cm、10cmで動く頸部の筋力=7.5kg、M=5×15÷10=7.5kg。頭の位置を5cm前に出すとM=5×(15+5)÷(10-5)=20kg。頭を5cmだすと頸部筋は、2.7倍の力を必要とすることになる。背中が丸く、頭が重心線よりも前方に移動し、この姿勢で手を出すと手の重さが付加され、頸肩部が緊張する。/腰痛、肩こりの科学
Abnormal Head Posture |
Normal Head Posture |
前方頭位にみられる姿勢における弛緩型は、全身を脱力した状態で、耳と眼を結んだ水平面は、後方に傾斜、下顎はやや前方に突出し、背中は湾曲、骨盤は後方に傾斜、重心は股関節の回転軸を通る垂直線よりも後方にある。正常型よりも10%の省エネ。緊張型は、気をつけの姿勢で、下顎をひきつけているので、FH平面は前方に傾く。胸を張り、頚椎と胸椎は一直線に並ぶ。腰椎は前湾し、骨盤は前方に傾斜し、重心は、股関節の回転軸を通る垂直線よりも後方に来る。正常型よりも20%余計エネルギーを消費する。
姿勢の問題
正面を見ていること出来るか?姿勢をまっすぐに出来るか?まっすぐに歩くことが出来るかを評価する。頚椎の可動域に制限があれば、患者の頭が前傾し、目は前方を向く。首を傾けていたら顎関節の問題に波及する。頭の姿勢が顎の位置が決定するからである。このような姿勢から、首や肩の筋肉は、過負荷になる。頭を傾けるには、一側の胸鎖乳突筋を緊張させ、他側を弛緩させる。ゆえに、左右の胸鎖乳突筋の緊張度が異なるとしたら、頭位に問題の問題を示唆している。成長後に、頭を整直させようとすると頚椎、胸椎、腰椎が逆に異常になるかもしれない。一般的に、歯科医師は右傾斜、衛生士は。左側に傾斜するように姿勢が変化していく。
顔面部の前頭部、側頭部、咬筋に疼痛を持つ患者さんに対し、デンタルチェアを水平にして、術者の手で頭を上方に牽引してみる。もし、痛みが軽減したのであれば、頭を上方に持ち上げ、後頭骨と第1頚椎:環椎の環椎動脈の間隙を開いてこの部の圧迫を軽減したことによって口腔顔面痛を軽減したことを意味している。このような患者さんに対し、枕を頭に置き、首に枕を置かないように指導する必要がある。首に枕を置くと頭が後傾することによって、この間隙が更に狭まり、疼痛と増悪するからである。テレビやコンピューターなどを見る時も、猫背にして頭を起こして間隙を狭窄してしまいので、目線より低い位置にモニターを置くように指導する。
脊椎
背骨は、前方にある椎体と後方の椎弓に分けることが出来る。背骨には、後方に曲げる機能はあるが、前屈する機能がなく、その機能は、前方、あるいは、腹筋が担う。前方成分は、体の支持、後方成分は、動きや姿勢とコンロトールする機能がある。椎体は、体を支える機能がある。椎弓は、脊柱管を形成し、中枢神経である脊髄という神経を通し、保護する機能がある。頭蓋骨は脳を保護し、背骨、特に、椎弓は脊髄を保護する機能がある。棘突起には、靭帯や筋肉がつき、背骨を動かしたり、姿勢を作る。横突起は、靭帯や筋肉がつき、背骨を動かす
平衡機能
小脳は、身体の平衡を保ち、運動を調節する。機能は、運動分野で、運動をパターン化してスムーズに出来るようにする。平衡感覚は、耳の内耳にある三半規管と耳石器が司る。体を回転させて止めても立っていられないのは、三半規管のリンパ液の動きや、耳石器のゆれが止まっていない為である。三半規管の中は、リンパ液が入っていて、有毛細胞が並んでいて、頭が傾斜するとリンパ液が動き、その動きを有毛細胞の毛で感じ取り、脳幹を通じて、その情報を小脳に伝達する。耳石器の中にも、液体が入っていて、頭が傾斜すると動く耳石で有毛細胞がたわみ脳幹を通じて、その情報を小脳に伝達する。平衡機能とは、身体のバランスをとる神経機能のことである。
よい姿勢を作るために
腹筋が背筋より強いので、運動していないと背筋が弱まり猫背になる。良い姿勢、運動で脳、背筋が活性化され、姿勢、知能が良くなる。背筋の内側の脊椎骨の中に脊椎(中枢神経系)が入り脳につながり、座って背筋が曲がっていると、脳活性が低下する。姿勢が悪いと十分な酸素を脳に供給できなくなる。平衡感覚に関わるのが、内耳の蝸牛のそばの三半規管と耳石器である。これらの器官によって感知された姿勢は、電気的信号として脳幹を経由して、小脳に伝達される。小脳は、その情報に基づいて体のバランスをとって、姿勢を決定する。自転車、ダンスなどは、特に小脳を使う運動であり、小脳を使う運動は、身につけると長期にわたって保持される。/子供の脳を育てる教育
姿勢による診断
姿勢の良し悪しはその人の手の位置だけでも判断することができる。頭を前に出す前方頭位の姿勢を保っていると、肩が落ち、猫背になり、喉の筋肉が緊張し、顎を後退させ、出っ歯になってしまう。重い頭を頚部の筋肉が牽引して、その部に発痛点を形成し、偏頭痛を誘発する。前から見て、親指から後方の指が真っ直ぐに平行であれば、肩の位置が正しい。もし、すべての指が見える様であれば、肩が落ち、頭が前を向き、胸の筋肉を圧迫する悪い姿勢であることになる。
頚椎の可動域に制限があれば、患者の頭が前傾し、目は前方を向く、前後に頭を曲げてもらうと、運動制限がある人は、腰、胸部を利用して、前後屈する。耳を肩に接触させるつもりで、首を左右に曲げてもらう。平均、40-45°傾斜するのであるが、側屈に制限がある人は、肩が上がる。真横に首を回すことができるが、回旋制限がある人は、90°を下回る。無理に左側に回旋させようとすると、反対の肩が動くことで知ることができる。例えば、右回旋は、右側の頚板状筋、左側の胸鎖乳突筋が主体となって達成されるので、それらの筋肉の機能低下は、運動を制限することになる。
Lunbago Examination
デンタルチェアに90°に座った姿勢を取らせ、お辞儀させる。その時、痛みを伴わず、腰を曲げることが出来るかを診る。その時、痛みが出現した場合、腰だけの問題か下肢への痛みが伴うか?診断しなければならない。痛みが腰部に限局されるなら、椎間関節症候群、腰椎の傍脊柱筋筋膜の問題、あるいは、椎間板の可能性を考えられる。もし、その痛み、下肢への痛みが伴う、神経根障害、神経根圧迫を来す様な椎間板に問題があることが考える。
ヒップレベルは、腸骨棘を触診して、片側の腸骨稜が上がっていないかで診る。腸骨棘の高さが左右で、同じであれば、足の長さも同じであり、片側に傾斜していると、その側の足が短いことになる。片側が短いので、短い方に傾斜してしまう。それを補償する為に、上部を、逆方向に曲げ、過補償し、その補償しすぎた分を取り戻す為に、又逆に戻してしまう。例えば、右側の骨盤が高ければ、腰痛椎間板か神経根障害に依る右帽脊柱筋に依る筋肉スパズムがあるかもしれない。次に、腰椎の湾曲の過度、喪失を診る。もし、骨盤の前傾、あるいは、腹が出ていれば、椎間関節症に依る,慢性の腰痛症が存在していることがある。
姿勢の良し悪しはその人の手の位置だけでも判断することができる。頭を前に出す前方頭位の姿勢を保っていると、肩が落ち、猫背になり、喉の筋肉が緊張し、顎を後退させ、出っ歯になってしまう。重い頭を頚部の筋肉が牽引して、その部に発痛点を形成し、偏頭痛を誘発する。前から見て、親指から後方の指が真っ直ぐに平行であれば、肩の位置が正しい。もし、すべての指が見える様であれば、肩が落ち、頭が前を向き、胸の筋肉を圧迫する悪い姿勢であることになる。
歩行
予防
歩行や運動は、骨粗鬆症、腰痛を予防する。背骨の骨と骨との間に、クッションとなる椎間板が存在し、重みが加わると変形する。重みが去ると浸透圧によって水分が速やかに吸収されてもとの厚さに戻る。姿勢を変えることが椎間板への圧変化を促し、この圧変化は、椎間板の代謝を促進する。運動をすると肝臓や筋肉のグリコーゲンの消費が速く、更にエネルギー源として脂肪が分解され、減量が進む。この過程で、血中の遊離脂肪酸の濃度が上昇し、それが空腹中枢を刺激して強い食欲を誘発する。運動では、グリコーゲンとともに脂肪が炭酸ガスと水に分解される。この水が運動でかく汗を補うことにある。一方、サウナの汗は、血液の水分である。
二足歩行
二足歩行は、振り子の原理を応用し、エネルギー効率の良い移動方法である。左右の足は、倒立振り子になり、歩行時、右足の上で体は前に倒れる。ある程度、倒れたところで、そこに体の後ろ側にあって、地面から離れていた左足が出てきて、接地し、体を支える。左足のまっすぐ上に重心がきて、さらに、左足の接地点よりも重心が前に来る。そこに右足が出てきて、支える繰り返しである。効率のよい歩行が、長距離移動を可能にした。移動の効率化だけでなく、直立歩行をとるようになったこのメリットは、他の特徴が進化する基盤となる適応という意味で、前適応と捉えられる。(なぜヒトの脳だけが大きくなったのか)
ヒトは土ふまずができ、スプリングが利かせて、踵をつけ、蹠行で歩く。扁平足はスプリングが弱い。歩行は踵を上げつま先で、地面を蹴る。片足だけつま先立ちになる際、ふくらはぎの筋肉使用するので、ふくらはぎは太くなった。腰歩行とは、踵から下ろし、足は腰中心に振り子運動する。膝歩行は、つま先から着地し、足は腰、膝で、別個に振り子運動する。上下動きが激しく疲労しやすい。すり足歩行は、足の裏は地面に水平運動することをいい、腰は伸びているが、腰を後方にひく、上体は、前傾するが、前屈はしない、膝は曲がるが、下腹部に力を入れる。(人類生物学入門)
類人猿の足は、曲がり物を掴むことができるがが、ヒトの足骨は靭帯で強固に連結され、ほとんど動かない。動かないことで、体重を受けることができ、歩行時に、体重移動が能率よくおこなわれる。又、土ふまずが形成され、足底の血管、神経を保護し、歩行時の体重移動をスムーズにする。ブラキエーションの適応として、上肢が長くなり、ヒトは、2足歩行の適応として下肢が長くなった。人は、足の親指が発達し、足を地面から離す際に、親指で地面を蹴って前進する。ヒトは幼児期までは下肢は短く、猿と同じ比率であるのでハイハイができるが、少年期以降になると、足が長くなり、はいはいはできなくなるように系統発生している。(人類進化学入門)
腰痛に対する歩行
痛みがひどくない限り、歩くことを積極的に進めている。歩行は椎間板だけでなく、精神的にも良い効果があり、歩行は不安、ストレスから解放される。歩くと全身の筋肉が動く為、脳の多くの部分が活動を始める。脳は歩くことに集中し、他のことに意識が上らなくなりストレスが和らいでいく。
椎間板は、頚椎どうしのクッションの役割がある。コラーゲンで形成され、弾力性がある。長距離選手の腰椎をMRIで調べてみると、MRIにおける椎間板は、劣化すると水分が喪失して黒く映る。歩いたり、走ったりすると椎間板に周期的な負荷が加わり、椎間板は白く映る。その刺激によってコラーゲンが新しく形成される為、劣化しにくくなる。歩行、走行は、椎間板の新陳代謝を促す良い負荷になり、毎日、歩いている人は腰痛には無縁になる。
頸部痛
頚が動かせるようになると、トカゲにあった頭頂眼が退化したが、脳の中に痕跡器官がある。爬虫類に進化するにつれて、エラのあった場所が、くびれて、頚になる。頚を胴体とは別方向に動かせるように進化したが、頭と肩の付け根にある鎖骨とは、頚を隔てて離れ離れになった。皮骨は、元来、甲冑魚の体表を被覆していた骨で、兜の一番下の縁だけが、頚の下に取り残されたのが鎖骨である。かつて、中国で囚人をこの骨の後ろでつないでいたことから鎖骨という名がついた。哺乳類になり、脚が胴の下に伸びる下方型の姿勢になると、肩甲骨より上方にある筋が体重を支持する為、その筋がつく上の肩甲骨が拡大した。
頭は、体重の13-14%で、50キロの人は7キロあることになる。首は、頭、腕、背中、胸を支え、痛みを誘発しやすい構造上の問題がある。首は頚椎という7つの骨で形成される。頚椎の間には、Shock of Absorberの役割をする椎間板があり、この存在によって頚を動かすことができる。椎間板中の水分は生後、90%であるが、20歳になると80%に低下する。椎間板を脊髄が通り、脳と全身をつなぎ、脳から運動の命令を全身に、全身からの感覚の信号を脳に伝達する。椎骨から神経の枝である神経根が出ていて、頚椎では腕に行き、手や腕の運動、感覚の信号をとらえ脳に伝達する。
頸部痛において、頚椎に関連したものに頚椎捻挫、むち打ち症、骨折などがある。頚椎の変化が神経に症状をもたらすものに、頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯硬化症等がある。神経に関連したものに神経にできる脊髄腫瘍がある1.首を前に倒すと疼痛がでる場合、神経、特に、脊髄が障害されている可能性がある。2.首を後に反らすと疼痛は、椎間関節から起こる疼痛に特徴的である。3.首を後に反らすとしびれが出現する場合、神経根が障害されている可能性がある。1-3がなくて、休むと良くなる場合は、原因は筋肉にあり、ストレッチ、マッサージで疼痛が解消されることが多い。ねちがいは姿勢による筋肉に問題があり、頚を冷やさないようにする。
頚椎症は、椎間板が、老化して劣化すると、上下の頚椎が不安定になり、椎間板から骨棘が出てきて、安定を図る。横から出現した骨棘は、神経根を圧迫し、疼痛、しびれを誘発するこの一連の変化を頚椎症という。頸部痛の原因で最も多い。椎間板が飛び出し、神経を圧迫することを椎間板ヘルニアという。後縦靭帯骨化症は、脊椎と頚椎との間にある後縦靭帯が骨化し、肥厚し、神経を圧迫し、疼痛、麻痺の原因になり、手足の脊髄反射の反応を示さなくなる。病変が進行中には、疼痛があるが、長期化し、感覚がマヒし、痛みが消失していることがある。
頚椎症などの脊髄の障害は、手足の痛みを誘発するのは、手足の痛みを脊髄神経が司っているからで、変形性関節炎、慢性関節リューマチなどの関節に障害を被っている場合、四肢に疼痛を訴える。頚髄症は、脊髄の圧迫が強く、足のふらつき、腕のしびれ、書字が困難になる。鎮痛剤の内服、神経ブロックで除痛する。頸肩腕症候群は、椎間板が突出して、神経、脊髄を圧迫されると手足の麻痺が生じる。後頭部、首、肩、腕などの感覚と運動を司っている頚神経が頚椎の変形で圧迫されると頭痛、頚肩部痛、腕の痛みが生じる。これらが同時に起こった場合、頸肩腕症候群という。酷くなると、痛みが首から腕まで広がり、筋肉や感覚の低下する。
肩
肩は腕を支え、頭の重さ、女性は、胸の重さもかかっている。こうした負担がかかることによって、肩に痛みを誘発する。猫背あるいは、姿勢が悪くなると僧帽筋が緊張し、血行障害を誘発し、肩こりに発展させる。なで肩は、肩が低くなり、僧帽筋が緊張し、神経が圧迫され、胸郭出口症候群に発展し、手のしびれ、だるさを起こしやすい。しかし、背骨の肩甲骨と肩甲骨との間に痛みが生じている場合は、内臓の異常が原因であることが多い。肩の痛みが関節に起因している場合、関節の痛みで1番多いのが五十肩で、五十肩は関節を守る関節包が炎症によって硬くなり、滑液包が炎症を起こし肩が動かしづらくなってしまう。
50肩
50肩は、50歳前後に多く。関節は、クッションの役割をする滑膜、軟骨で被覆され、その周囲は滑液で満たされているが、関節がすり減り、骨に負荷が加わり、疼痛が生じる。肩を安静にし、温かく保ち、消炎鎮痛剤を服用する。ひどい場合は、局所麻酔剤、ステロイドホルモン、ヒアルロン酸などを関節内注射する。急性期を過ぎれば、疼痛を我慢して体操をさせ、癒着、拘縮を防止することが大切。ゴッドマン体操といって、アイロン、鉄アレイ(ダンベル)で振り子運動をさせる。短時間でも毎日運動することが重要である。
石灰性腱炎は腱板に石灰、カルシウムが沈着し疼痛を発生させるのであるが、石灰を注射針で除去すると疼痛が軽減される。腱板断裂は、筋肉と骨をつなぐ腱板が断裂することによって最初は、動かしたときに疼痛があるのが、安静時にも疼痛が生じ、60-120°の範囲までにしか腕が上がらなくなる。腕をあげてきた時に、切れている腱板が腱包と衝突し上げづらくなる。腱包を通過する90°あたりで疼痛が出現する。五十肩の慢性期な、動く範囲の最大のところで疼痛が出現する。インピンジメント症候群は、腱ぽうが落ちてきて、腕をあげたときに、腱板と上方にある腱ぽうが衝突し、腕が上がらなくなる。骨を除去することによって、空間をつくる。
石灰性腱炎は腱板に石灰、カルシウムが沈着し疼痛を発生させるのであるが、石灰を注射針で除去すると疼痛が軽減される。腱板断裂は、筋肉と骨をつなぐ腱板が断裂することによって最初は、動かしたときに疼痛があるのが、安静時にも疼痛が生じ、60-120°の範囲までにしか腕が上がらなくなる。腕をあげてきた時に、切れている腱板が腱包と衝突し上げづらくなる。腱包を通過する90°あたりで疼痛が出現する。五十肩の慢性期な、動く範囲の最大のところで疼痛が出現する。インピンジメント症候群は、腱ぽうが落ちてきて、腕をあげたときに、腱板と上方にある腱ぽうが衝突し、腕が上がらなくなる。骨を除去することによって、空間をつくる
気管
脊椎動物は、鼻から上は背中から続き、口から下は腹からの続きであるが、肺呼吸に切り替える際に偶然に肺が腹側にできてしまい、鼻(背中側)-肺(腹側)-口(腹側)-食道(背中側)と、対応する器官を結ぶ管が咽頭と喉頭のところで交差してしまった。直立して、背骨と口腔の間にある咽頭のスペースが前後から圧迫されて、空気と通り道である喉頭が下がり、咽頭の長い部分で口から入ってきた食物と、鼻からの空気が混じりあい、食物が気管に入ってしまいむせるようになった。歯と顎が退化し、肥満は、咽頭のスペースがさらに減少させ、睡眠時無呼吸を起こすようになった。チンパンジーの咽頭の位置が高いので、ヒトのような発声は不可能であるが、ヒトは、咽頭が下がったことによって、食事と発話が同時に行うことが不可能になったが、いろんな音声を出せるようになった。言語が脳を肥大化しただけでなく、咽頭を喉の奥に下げた。
心疾患
哺乳類の腹腔内の内臓は、垂れ下がるように膜で被覆されている。ヒトは、直立すると、その膜は下方に垂れ下がり、消化システムが詰まり、胃下垂、内臓癒着、痔、鼠径ヘルニア、下肢の圧を上昇させ、静脈瘤、足首のむくみ、胃下垂、遊離腎を起こす。血圧が高くなり、動脈血が頭部に上がることを可能にしたが、直立による脳内の血圧の低下は、脳貧血、めまい、視覚喪失を誘発する。心臓が血液を押し出しが弱いと、肺や足に欝血し、息切れ、足首の腫れ、うっ血性心不全を誘発する。欠損を誘発する遺伝子は、その損失を超える利益をもたらしているために残されている。
側湾症
側湾症の原因
側湾症は、脳幹、あるいは、小脳がコントロールしている身体の平衡機能障害によって起こると考えられている。成長期における平衡機能のわずかな障害が積み重なって、背骨の成長に悪影響を及ぼし、背骨が曲がり、姿勢が悪化すると考えられる。姿勢が悪い、骨盤がずれている、歯並びが悪いから背骨が曲がるということもありえない。/子供の背骨の病気を治す/子供の背骨の病気を治す 。側湾症の場合、背骨の曲がった部分の骨はただ横に傾き、ずれるだけでなく、回旋変形をというねじれを起こす。骨が回旋すると、この堆弓根の像が左右対称の位置にずれる。このずれの大小によって、骨の回旋変形が判定される。このように、背骨を軸として、回旋変形が生じるので、左右の肋骨は後方に盛り上がり、背中に肋骨隆起と呼ばれる変形が出現する。右の背中に肋骨隆起が見られる場合、左の胸が盛り上がり左のバストが張り出す。肋骨隆起が上方に出現する場合、出現した側の肩甲骨が盛り上がり、その側の肩が高くなり、肩に差が出現する。
側湾症は、シングルカーブ:C字形態と曲がりが2つあるダブルカーブのS字形態がある。どちらも胸椎で、右側に凸湾が出来る。側湾が目立つのは、シングルカーブである。胸椎の下方や腰椎に側湾がある場合、肋骨隆起が生じる場合と同じようなメカニクスで、曲がった側の背筋が隆起する腰部隆起が発現する。右側に曲がる側湾の場合、右側の背骨が盛り上がるように、右側に腰部隆起が見られる。この腰部隆起によって、ウェストラインの非対称性が生じる。足の長さが変化したり、骨盤が傾斜することはない。はっきりした原因がなく、背骨が曲がる場合、突発性側湾症という病名がつく。突発性とは、原因のわからない、原因がないと意味する。
側湾症が腰の痛みの原因にはならない。側湾症と正常な人との疼痛を訴える頻度に差はない。突発性側湾症による背骨の変形は、腰痛の原因にはならない。中年になると背骨の変形によって、疼痛の原因になる頻度が高まるが、コブ角が60°を超える場合に限られる。コブ角が20°以下の場合、変形は判らない。30°になっても裸にならない限り判らない。40°以上になっても服を着ている限り判らない。90°以上になると、服をきていても判るようになる。60を超えると、側湾変形は悪化し続け、胸郭が変形して心肺機能低下、肺の容量が縮小し、動き、肺活量、血流が低下し、換気不全、心不全、腰痛を誘発する。80°を超えると頻度は高まる。
エクササイズは、姿勢を悪化させる原因となる背骨の周囲の筋肉、靭帯が固くなるのを防止するストレッチ効果がある。そのエクササイズによって、体幹筋である背筋、腹筋が鍛え、側湾変形の進行を阻止しようとするのである。しかし、側湾が酷くなれば、手術するしかなくなる。側湾症における手術は、コブ角、40-60°はグレーゾーンで、40°を超えれば、考慮する必要がある。60°を超えれば、側湾変形は悪化し続け、心臓、肺機能に影響し、背中、腰に疼痛が出現する可能性が高いので手術する意外方法はない。
脊椎変形
背骨は、頚椎に前湾、胸椎部に後湾、腰椎部に前湾の3つの彎曲を持つ。この彎曲の異常を脊椎変形といい、脊椎変形には、前湾症、後湾症、側湾症があるが、前湾症は稀である。成長期に変形が進行し、悪化する。後湾症は、猫背といわれているが、後湾症とは、姿勢による猫背ではなく、背骨の形そのものが後ろに曲がったものをいう。なぜなら、猫背は、背骨まっすぐに出来るからである。高齢者の猫背は、骨粗しょう症の症状であり、背骨の骨が退行して変形して後湾変形を起こしたものである。背骨のどれかの骨に形態異常があると背骨全体に変形が生じて側湾だけでなく、前湾、後湾して、脊椎変形症に発展する。背骨全体に変形が生じる。
神経あるいは、筋肉に原因して、側湾、前湾、後湾など背骨が曲がってくることを神経性脊椎変形症という。筋肉自体に問題がある場合と、筋肉の収縮をコントロールしている神経に問題がある場合、あるいは、両者によって起因していることある。背骨を支持している背筋、腹筋が機能できなくて、背骨が曲がっていくのである。骨の成長が完了する前に背骨を支える神経、筋肉の麻痺があると、骨の変形が生じる殆ど女性に発症し、成長と共に、悪化していくのも女性である。
終りに
私が尊敬するジョン コルトレーンは、演奏に神をイメージし、創造説を信じる熱狂的な宗教信者だったが早死にした。私が好きなアルバート アイラーはそれ以上に宗教狂いしていたが水死体で発見された。チャールス ミンガスというベーシストは、CDのタイトルに「直立猿人」とするくらい、米国人にしては珍しい進化論者で、人を刺激するようなタイトルにして大丈夫だろうかと心配した。ヘッケルは、ヒトとサルのミッシングリンクはアジアにあると予言し、ピテカントロプス「直立猿人」と学名まで用意した。それを信じてしまったデュボアは、アムステルダ大学の解剖学講師を辞め、軍医になってアジアに行った。そして、ジャワ島で「直立猿人、ジャワ原人」を発見してしまった。ヒトの先祖は、私が小学校の頃はピテカントロプスで、中学校ではアウストラロピテクスだった。現在は700万年前のサヘラントロプスになっているらしいが、次は何になるんだろう。5万年前、アフリカで発祥したヒトが、世界に分布を広いめていった。