審美歯科学会演題
【演題】審美性回復の為の包括的歯科治療の役割り(2000年)
Role of Comprehensive Dental Treatment
For Aesthetic Recovery
キーワード:顔貌の印象、舌側矯正、顔面軸
【緒言】歯科治療のゴールは口腔衛生環境、顔面口腔審美を供給することである。臼歯の喪失は、下顎骨を前方回転させ、下唇が上唇より前方に位置するとコンケイブプロファイルになり、下顎前歯部の歯頚部迄露出させるという経過をたどった症例を通じて審美性回復の為の包括的歯科治療の役割りを検討した。失われた審美性を回復する為に、正常値に近づけなければならない。通常、顔には対称的で緩い湾曲の上唇、下唇、スマイル、切歯、チンのラインがある。切歯平面は、下口唇のラインに従い、スマイルラインは、下口唇ラインと調和し、通常、3~4mmの上顎前歯切端の露出があり、その上唇のラインに下顎前歯の切端のラインが来る。上顔面と中顔面の長さは等しく、下唇の長さは上唇の2倍で、下唇は、チンより約3mm前方に位置し、上唇は下唇より約2mm前方に位置するが、下唇が上唇より前方に位置すると、顔貌の印象が全く異なってしまう。治療目標は、下顎骨を後方回転させることによって、下顎切歯のラインを上唇のラインに位置させ、下顔面高を中顔面高に近づけ、上顎前歯の露出を図り、下唇を上唇より後退させる事である。矯正治療による下顎骨の後方回転は、限界があるので、インプラント補綴を併用して、正常値に近づけようとした。
【演題】包括的歯科治療による審美性の回復(2001年)
Restoration of Esthetics by Comprehensive Dental Treatment
【初めに】1952年、ブローネマルクが発見した表面処理されたチタンが骨に付着するオッセオインテグレーションという概念とはインプラントと骨との直接の接触で、軟組織が介在していない状態を意味する。このインプラントの出現は歯科治療とその概念を根本から変えた。1978年に藤田欣也が考案した舌側矯正治療は審美的に優れ、不正咬合の原因である口腔習癖を是正する。歯科治療の目的は顎顔面口腔の審美、健康、機能を回復することであるので、歯周、インプラント、矯正治療が不可欠である。そこで症例を通じて歯科治療の目的達成のために要求される包括的歯科治療の意義について考察する。【診断および治療計画】症例は、25歳1カ月の女性で上顎中切歯間の乳頭の退縮と、関節雑音、開口制限、疼痛、左側臼歯部はクロスバイトを呈し、左側での片咀嚼癖を有していた(。最大開口度は、36mmの開口制限があり、右側関節は関節空隙が減少し関節窩と顆頭の形状が一致してクレピタス音が出現し、開口度を増して滑走運動に移行するときに左側顎関節で疼痛が発現し、顎を右側に偏位した。この患者は骨の変性変化の少ない左側関節でより疼痛を訴えていたのは左噛みに起因したものと考えられる。左片咀嚼は、左側の頸部筋、胸筋、咀嚼筋を機能亢進させて、圧痛、左咀嚼のため、左側の頸部筋がより収縮し左側斜頸が出現した。また、Bilateral Manipulationで痛みを誘発し、筋痛と内障による関節由来の疼痛が重複していた。【治療】本症例の顎関節疾患を有する患者では不安等の精神的な問題を有していたので、疼痛軽減と精神的問題の解決のために生活指導を行い、内科医に非ステロイド系の消炎剤、抗鬱剤、胃薬の併用処方を依頼した。下顎臼歯部咬頭が接触する棚を付加した拡大装置を装着させて顎関節後方の二層部を保護し、さらにインプラントで咬合を回復し、矯正治療で歯牙接触点から歯槽骨頂までの距離を短縮して結合織移植で歯肉の厚みを獲得し、審美性の回復を図った。
【演題】見えない矯正治療を臨床に取り入れる為に(2007年)
To adopt in order to invisible device for clinical treatment.
【Key word】審美、外見、見えない矯正治療
【研究目的】その人の顔の外見がある特殊な行動をする。犯罪者の身体的特長を整形してから出所させると、再発率が低下する。醜顔、乱杭歯、刺青は、相手は偏見から判断しビビってしまう為、依然の問題行動が増長させてしまうのである。しかし、顔や歯が美しくなると、テレビや雑誌では美男美女がヒロインを演じ、自分もヒロインをシミュレーションしているので他人にも優しくなれる。美しい歯や歯並びは、回り人が美しい歯だと思うので、美しい性格と清潔な役割性格を身につけることになる。その為にも、最も審美的な矯正治療である舌側矯正治療であるリンガル矯正治療を患者さんに快適に、術者側には、簡単な治療メカニクスにするかについて考えてみた。【材料と方法】問題は、最も審美的な矯正治療である舌側矯正治療を唇側の矯正治療と同じ様にするかである。その為に、拡大装置、エナメル質の削合を行う事で抜歯をなるべく回避する。抜歯した場合は、エンマスでクローズし、装置をシンプルにし大臼歯の遠心移動は行わない。ヘッドギヤーなどの顎外装置、牽引ループを用いず、歯冠を修復してストレートワイヤーにすることである。【結果ならびに考察】学校教師は、美しい顔、歯や歯並びを持つ生徒に対し好意的な評価をする。その子の外見からして教師は、その子が優秀なはずだと思ってしまい、実際にその子にピグマリオン効果が働いて、教師の期待に無意識に答えて優秀になることが知られている。人は、他人に行為の返報性を期待して善意をする。人は何を他人の為の行ったのか常に気にしているので、他人から行為の返報性がなくなれば欲求不満になって怒りだし、お互いの関係が崩れる。しかし、美しく、清潔な外見を見ただけで快報酬を得ているから報酬は期待できなくても、その人を喜ばせようと利他的行動が誘発される。あるいは、快刺激を与えてくれた人に対し、借りを返さそうとする返報性のルールを守る。美は人にとって快感であり、外見ほど他人に影響力を与えるものはなく、愛情、尊敬を受けて、その人の自信に影響し、人付き合いもうまくなる。笑顔が作れ、歯が白く歯並びがよいと、魅力、誠実さを倍増させる。人は、他人の外見で、その人の善悪を判断するように、テレビや雑誌で、学習しているだけでなく、外見を客観的に観察評価する感覚を持ち、無意識に行動に踏み切らせるので、容姿を磨く必要があるのである。人は、ファッションを身につけ、審美歯科治療や矯正治療で口元を美しくして、他人の羨望を煽りたいのは動かしがたい事実のようである。最も審美的な矯正治療をいかにして臨床に導入し、注意点、問題点、対策を考えた。
【演題】包括的歯科治療の原則Principles of comprehensive dental treatment(2012年)
【キーワード】:美、軟組織診断、包括的歯科治療、骨整形
Beauty,Diagnosis of soft tissue,Comprehensive dental treatment,Osteoplasty
【緒言】
美は、明確さ、調和、色彩、対称性にあり、全体と調和する個々の部分の適切な比率である。対称性とは、中央を境にして左右の形が同一であることである。顔や口腔の美も、対称性や平均にあり、人の美意識は平均を好む傾向がある1)。美は、比率と数字に基づいた美意識であるので、審美歯科治療の成功の鍵も、比率と数字に基づいた基準を持つことであり2)、歯科医が審美歯科治療を行うにあたり、分析を行った上で診断し、治療計画を立案して治療を行った症例を報告する。
【診断および治療計画】
症例は、32歳の既婚女性で、主訴は、頭痛、顎関節痛であり、また、突き出た頤、前歯の修復物の改善を希望していた。頭の前後幅径が短く、側方径が幅広いProgenie Face(下顎前突様顔貌)を呈していた。
【演題】顔の審美を考える(2012年)
Thinking of face esthetics.
【目的】メディアは、人の価値感、行動に影響し、規範を提供し、メディアが作った顔がかっこいい、可愛いというような外見の基準は、人に圧力をかける。メディアは、非常に顔の良い人を描写するという偏りがあるので、レベルを上げ、劣等感をうみ、顔を直させようと圧力を加えていることになる。そして、患者さんは、準所集団に同調したいという欲求がくすぐられ、歯科治療を受けようとする動因が作られる。そのため、顔の存在意義、意味を考え、歯科医としていかにして治療に参加することができるか考える。【結果、結論】顔は、他人に与える情報であり、好感度、誠実、健康を予測する指標でもある。顔が良い人は、ちやほやされるので、自己愛が強まり、野心や成功を志向する「野心の極」を発達させる。逆に顔の自己評価の低い人は、社会から退却を余儀なくされ、自己防衛的な人格特性を形成し、社会的、異性との性的関係のチャンスを失う。ほとんどの男性は女性と縁がない人が多いが、自分の顔に対する自己評価が高い男性は、自信ある行動パターンを形成し、数多くの女性を誘い、性的関係が華やかなり、肯定的な経験も多くなる。口蓋裂などの歯並び、顔や体に障害を持つ人は、周囲の人から注意が注がれ、プライバシーの侵害を経験し、自尊心、自己愛を喪失させ、周囲から回避し、対人知性の発達が阻害される。このように、個人の顔が行動特性や性格が決定するのである。顔の印象形成に最も、大きな影響をするのは口元であることが示されている。矯正治療は、リケッツによると、歯を動かすことによって顔を改善することだという。ロールプレイなどの行動指導のみならず、矯正治療をはじめとする歯科治療によって、内面的な変化が生じ、コミュニケーションができるようになれば、不安は減少させ、一生を変えることが可能になると考える。
【演題】包括的歯科治療における矯正治療の役割(2013年)
Role of orthodontics in complehensive dental treatment
【症例の概要】1952年、ブロネマルクは、骨がチタンの表面に付着することを偶然に発見した。1964年、歯科に応用され、1976年、ブロネマルクインプラントシステムが確立された。インプラント表面の酸化膜と表面形状が骨との結合を可能にし、周囲に骨が再生される。このデンタルインプラントの出現は歯科の治療方針、治療を変え、歯科界、そして、多くの歯科医に影響していった。1976年, ブロネマルクシステムのブロネマルクメソッドプロトコールが確立されたが、当時のプロトコールは通用しなくなりフラップを大きく開ける必要はなり、更に短縮できるようになっている。しかし、当時のプロトコールは現在でも重要な基本であり、ドリル操作は、注水は十分に、スピードは遅く(1500rpm以下)ゆっくり外力が骨組織を破壊しない様にしなればならない。インプラントによって機能は改善されるようになっているが、まだ、乳頭再生などの審美の問題が残っており、いかにして矯正治療を用いて審美性を回復するか考えた。【治療方針、治療経過】インプラントを埋入すると生理的な骨反応として、1年後に骨組織は、垂直、水平方向に1mm退縮してしまうので、インプラントと歯牙間距離は2mmは必要で、両側で、2×2=4mmのスペースが矯正治療によってつくる必要があった。もし、それより短すぎると歯周組織を圧迫、外傷をもたらし、広すぎると健康的ではあるかもしれないが、乳頭は形成されないと考えられる。【考察、結論】歯周ポケットへの感染は、別のところに感染し、心臓病、糖尿病などの問題を引き起こし、生死に関わる重大な疾患を誘発と言われている。歯周ポケットを放置していくと、別の部位に感染が進行することが判明し、歯が維持出来るような状況であっても当該歯を抜歯してインプラントを施すことが勧められる。そのため、矯正治療によって、適正なインプラント埋入スペースを作り、ヒーリングアバットメントで軟組織が自然の形態に回復し、乳頭を作らなければない。
【演題】軟組織評価を用いた審美歯科治療(2014年)
Esthetic dentistry using evaluation of soft tissue.
【Key words】軟組織評価 Soft Tissue Evaluation, 審美歯科治療 Esthetic Dentistry,骨整形 Osteoplasty
【Abstract】ケースは顔の審美で最も重要なのが唇の位置だと主張した.彼と論争を繰り広げたアングルは最も重要なのは上顎前歯だと主張した.その後,アングルの主張が受け入れられるようになり,歯科治療の目標はよい咬合を作ることになり,硬組織の評価が主流になった1).しかし,硬組織が顔の特徴を確実に表現しないことや,顔や口腔の美の基準を示すのは軟組織であり,近年,軟組織を評価する気運が高まってきており、治療計画に軟組織の調和,比率,対象性,平均などの評価を取り入れ,顔貌の不調和を改善しようとした. 本論は,その軟組織の評価に基づいて行った治療を報告するものである.
Case argued that the most significant part of the facial aesthetics is the location of lips. On the other hand, Angle claimed that the most crucial part for the facial beauty is the upper anterior teeth. In this way, the hard tissue evaluation was a more popular approach to the facial aesthetics. However, we argue that approach to the soft tissue is more significant. We should consider evaluating the coordination, balance, symmetry and the average of the soft tissue. This paper reports our treatments based on the evaluation of the soft tissue.
【緒言】人は顔などのプロトタイプに対し学習ではなく生得的な好みが備わっている.人の顔はチェックされ,頭に記憶されているプロトタイプと比較評価され,情報として用いられている2,3). 多くの研究において,体の中で最も注意の払われるのは顔である.テリーの研究では,顔の魅力度と最も相関が高かった順位は,口,眼,髪,鼻の順だった.マッカフィーは顔の評価において口が眼よりも影響することを明らかにした4).マリノフスキーは,北西メラネシアの住民を調査した結果,美しいとみなされるための必須条件は,歯がきれいであること,豊かな形のよい唇であることだった5).美は,調和,対象性,平均にあり,全体と調和する個々のパーツの比率であるとされ6), 顔や唇の美も比率と数字に基づいた美意識であり,審美歯科治療も口腔軟組織や歯の比率と数字に基づいた基準を持つことが大切であり,いかにして軟組織の評価を治療に取り入れるかを考えた.
【演題名】:ガミースマイル症例のバイトプレーン効果(2018年)
(英文)Bite Plane Effect to Gummy Smile Patient
「症例の概要」症例は、ガミースマイルを主訴としていた。上顎が過形成で、上下前歯が過萌出し、それに歯肉が付随し、スマイルすると、露出は前歯のみならず、臼歯部まで及んでいた。「治療方針」インプラントを望んでいなかったため、矯正治療で上顎平面を前方回転させ、ガミースマイルを改善することだった。「治療経過」藤田欣也先生が示した舌側矯正治療のバイトプレーン効果を利用して、上顎平面を前方回転させようとした。「治療成績」矯正治療は、顔面軸を回転させ、顔面を長くし、ガミースマイルを作る傾向がある。矯正治療に強いられるⅡ級顎間ゴムは、咬合平面を下方回転させてガミースマイを誘発しがちになる。また、Ⅲ級顎間ゴムも前方回転させて下顎ガミースマイルに発展させてしまうことがあるので、顎間ゴムの使用を少なくした。「考察」Tjan AHLとMiller Gは、ガミースマイルとは、弛緩した状態で上顎歯肉が2mm以上の露出をいい、人口の10%に見られるとしている。スマイルの際の歯肉露出は若い人にしばしば見られるが、酷くなると口腔顔面の審美性を損なうことになりかねない。通常、前歯部露出は、非外科的治療が行われ、軽度であるならば、インプラントによって前歯部を圧下することで改善される。臼歯部まで含まれる骨格的な露出の場合は、外科による上顎骨コンプレッションが適応になる。非外科の場合、積極的な上顎平面の前方回転が要求される。「結論」ガミースマイルの露出が強く、しかも、外科やインプラント治療を望んでいない場合、上唇で歯肉を隠すために、舌側矯正装置のバイトプレーン効果によって上顎平面を閉じさせることが改善に寄与する可能性があると思われた。
【演題】見えない矯正治療をシンプル化するために(2020年)
Appearance-concerned devices as the door for socialization
【緒言】歯並びが悪いと、歯を出して笑うことを避け、不自然な笑い方を覚え、劣等感に陥ったり、ひきこもってしまいがちになる。以前、自分の子どもの悪い歯並びに悲観した母親がその子を殺した事件があった。歯並びなどの外見は人に快、不快刺激を与え、好感、嫌悪感を誘発し、扱いに影響し、良い人は良い扱いを受け、悪い人は悪い扱いを受ける。悪いと社会的出会いを回避し、不適応感を和らげる為にひきこもるというような防護策を身につけ、社会的適応度が低くなる。矯正治療を始めとする歯科治療は口元や顔の外見を美しくすることができるので、自分の外見が変わって魅力的だと思うようになると、対人技能能力は高くなり、その社会的波及効果は、社会的行動に影響して自信のある行動パターンを形成し、自己評価が安定して適応度も高くなる。このように、歯はコミュニケーションに関わる部分なので、良し悪しによって、好感、嫌悪感を持たれるので、歯並びを治したいと思っても、矯正治療を受けている人の絶対数が少ないので、矯正装置を見られるなどしてプライバシーの侵害、匿名性の権利の喪失などを経験したり、自尊心、尊厳を喪失させるのではという不安から躊躇してしまう。実際、矯正装置がからかいの対象となるのは日本に限ったことではない。矯正治療を受けることが社会的、職業的地位に貢献し、社会的に成功する手段だと考えられている。そのため、矯正装置が見えないプレートタイプの矯正装置や裏側で治療する舌側矯正治療が注目されている。
Those people with crooked teeth tend to avoid laughing, learning to laugh in a strange way (covering up teeth, or not opening mouth),and start to avoid socialization. A few years ago, we were shocked to hear an incident in which a mother killed her child with crooked teeth, being pessimistic about his/her future. In other words, people with crooked teeth tend to give a bad impression to other people, causing mal-adaptation to the society. Therefore, dental treatment, especially orthodontics, which can improve their appearance, tooth alignment and face formation will provide patients with psychologically positive effects. Once a patient starts assuring his/her appearance, his/her communication also will become effective, and s/he will start to adapt him/herself to the society much better, as s/he will have high self-evaluation about him/herself. In this way, teeth are deeply related to the issues for communication--it affects the other people’s impression. However, as few people go to orthodontists for treatment in Japan ,there is still a negative feeling about orthodontic treatment, such as fear, anxiety, and embarrassment. Having orthodontic device and showing brace on their teeth is embarrassing especially for those who already have lost their self-confidence about themselves, and it makes them feel reluctant to proceed with orthodontic treatment. It is significant to change people’s idea and perception of orthodontic treatment as it contributes to the improvement of social as well as economical status of patient. We will propose ways to increase the number of orthodontic patients in order to restore their self-confidence, such as invisible orthodontic device, e.g. plate-shaped device and lingual brace, etc. |